第6話死を疑似体験できる装置
スマートは上体を起こした。緑の草木と透明な棺が並んでいるのを見て、まるで霊園だとスマートは思った。心地のいい音楽が耳に流れてきた。ドビュッシーの「月の光」だ。棺の中は液体で満たされ、底がブラックライトで青く照らされていた。棺の側面に妙な注意書き-不凍液です。飲まないでください!-が光文字で浮かんでいた。飲むなと言われなくとも誰も飲むまい。母親の胎内にいたころに羊水を飲んだことのない機械人形しか存在しない地上でこの警告は落書きにしかならない。ましてやこのボディは水分を必要としないし、飲んだところで僕達にとって毒はすべて水と変わりないのだから。スマートが絶えず脳内再生される機械音声に従い、ボディを地上に慣している間、次々と他の学生も棺から体を起こし始めていた。名前、性別情報は集団で動く際、統率をとるために必要だと機械音声は続けて説明する。彼等の名前と顔を一致させようと、順繰りにスマートは視線を動かしていった。どいつもこいつも欲の深い豚共だとスマートは舌打ちしかけた。もちろん欲深いのは自分もおなじだった。男は体格のいい体つきで女は特別にグラマーで、小さな子ども時代に夢見た大人の色香を醸し出していた。それを可能にしたのはすべて力そのものだ。きっと中にはセックス-最先端技術-折り込みのアンドロイドもいるに違いない。そいつは相当に大物野郎だ。人間なら誰しもが嫉妬するほどの力を持った野郎だ。スマートは眉間に深い皺をつくった。
容姿端麗な顔ぶれはまるでマスコットキャラクターのように仮面を貼り付けたロボットが社交パーティを開いているみたいだ。「まるで人間じゃないみたいや」とか「慣れるやつと慣れない奴。紛争が起きたとき、死ぬのは後者だ」とか、みな近くにいるものと話していた。きっと地上を見物する者同士の集いがネット上であったに違いない。彼等の間に見えないつながりがスマートには見えた。知り合いのいないパーティはスマートをみじめにし、虚しい気持ちにさせた。「おい、お前スマートじゃないか?」見知った声だった。スマートは肩をたたかれたので、ふっと後ろを振り返った。髪をなでつけるように伸ばし、気障に前髪をより分けていた。ここがおれの分水嶺なんでねと言わんばかりだった。生え際からスッと指でしごきながら格好をつけ、スマートの足先、手前十センチの所につま先を置いた。その男は彼等の中でも華奢で肩幅は狭く、弱々しい体つきをしていた。お前のようなナルシストは知らない。それがスマートの頭に浮かんだ一言目だった。「久しぶりじゃないか!」と男は言い、スマートの手をひっつかみ握ってきた。彼の握力は見た目以上にあったので、スマートはその痛さに顔を顰めなくてはならなかった。
「やあ、クリープ。君も地上に来てたんだね。すごく嬉しいよ」スマートはつとめて笑みをつくった。これは重要なのだ。スマートは今日一番の満面の笑みを見せた。出会い頭に笑顔を見せると、クリープは内心抱いていた警戒心をスッとほどいた。笑顔ってのは人の警戒心をほどく最大の武器だ。その誰かが言った言葉をスマートは頭の片隅にずっと置いていた。クリープは言った。
「おれをクリープだと覚えていてくれたんだな。同じ講義をとることができたこと、あれは本当に正解だったぜ。正しい選択だったよ。お前みたいな良い奴と話すことができたんだからな」クリープのような自尊心がとても強く、人を見れば睨むような目つきで見るほどの警戒心を持ち、依存心の強い性格が激しく表に出る人にお近づきになりたいと思う人が少ないのは納得がいく。スマートはそう思った。
「僕もだよ。さっきまで一人でちょっと寂しかったけど、君を見たときほっとしたよ。そういえば僕はここにもう一人の連れと来たんだけど、見当たらないな」
「二人で、来たのか?」クリープはむだに区切ってゆっくりと言った。
「ああ。女の人とね。ざっと見回してみるとここには居ないようだ。まあ、かなり丈夫な人だから心配はしていないけどさ」クリープはスッと瞳から光りを抜き取るように目を細めて彼等を見回した。「ここに居ないのならきっと別の場所にいるだろうし、これから探しに行くのか?」とクリープ。「そのつもりだよ」勘違いして欲しくないのだが、クリープという名前はクリーミングパウダーから来ていることはもちろん間違いだ。苦いコーヒーを甘くしたり、とげとげしい人間をなだめたりしたことは一度もない。そんなマイルドな人間ではないのだ。スマートはじれったくなって言った。「とりあえずここを出てから考えるけどね」
「じゃあ。おれもついて行って良いか?」クリープのそれはcreep(這う)だ。自動車の飛び出し事故の要因のひとつになるクリープでも通用するかもしれない。彼は存外冷静さというものを持ち合わせ、ときに発揮するのだ。直情的に相手を罵倒することがないように安全機構が備わっている。スマートはしかたなく頷いた。「まあ、君が不都合じゃないならいいよ」しかし、クリープ変形となると話が違ってくるだろうとスマートは思った。物体に持続的な負担がかかると、時間の経過とともに歪みを生じさせる現象。高温環境下であればあるほど変形速度は加速し、それが目に見えないほど些細な変形だったとしても、やがては目に見えるほど明らかなものになっていく。まさか熱気に覆われた地上専用人形であるところのこの体が変形し破壊されるとは考えられない。しかし、疲労と熱気あまたの負担に永久的に耐えられるボディは存在しない。もし、あらゆる負担に耐えるのではなく、あらゆる負担を受けたとしても快復する再生機能があればよりよかった。悲しいかな、それは生命体にのみ許された生きようとする意志から生まれた絶対の力だ。地上を歩ける期間もそう長いものではないだろう。
スマートとクリープはB1Fと柱に表記された文字を見て、がっかくりした。二人は地面の矢印表記に従い、白い光を発するエレベータに乗り込むと、GFと光る文字盤をたたいた。
「どうせならユートピアのUと表記してほしかったぜ。そう思うだろう?」と後ろでクリープは言った。
「地上が理想郷だって? 誰もそうは思わないんじゃないのかな。どっちかというとディストピアだと僕は思うね。だからDだ」
「理想郷じゃない。空想上の世界という意味で使ったんだ。地下で暮すおれたちにとって一度も見たことがない地上の世界はまるで存在しないも同じなんだ。実際、おれは今日ここにくるまでずっとおれたちが暮してきた世界が地上だと思っていた。世界はずっとひとつしか無いと思ってたんだ」スマートは彼の言葉に違和感を覚えた。「君はネットとかしないのかい?」
「あんまりしないな。そのせいでよく珍しい動物を見るような目で見られることが多かった。どうして今そんなことを?」スマートの脳裏をアヴィの姿がかすめた。「今では世界が二つ以上あると思っている人間しかこの世にはいないからさ。僕もその内のひとりだよ。じゃあ、君は《アナザーワールド》に行ったことがないんだね」クリープは不適に笑った。きっとこうしたやりとりを何千回とやってきたのだろう。「おれは世界がひとつあれば十分満足できる安い人間だからな」クリープが言い終わると、エレベータが地上到着の合図を告げた。チン。なんとも安い合図で扉が開くと、二人は小走りで外にでた。とても暑い真夏に外にでた気分だった。額を汗が流れ、陽炎がゆらゆらと朽ちたセメントの道路から立ち上るのが見えた。道路には亀裂がはいり、腰の高さまである草がほうぼうに生えていた。すべてが太陽に向かって伸びていた。空に浮かぶ太陽を手に取り、ためつすがめつ調べなければ本物だと分かったものじゃないだろう、とスマートは思った。そんなスマートを尻目にクリープはそこらで「本物だ!本物だ!」と叫んでいた。何を根拠に喜んでいるのかまったく理解できなかったが、地上に来たということそれだけで胸が一杯になるのも無理なかった。しかし、地上に送るだけ送って、何の応対もなしとは少し白状ではないかとスマートは苛立ちを覚えた。とりあえずキャスターを探すためにも地図データと連絡をとれる送受信可能な機器がほしい。
「どうやらおれたちは日本にいるようだぜ。それも滋賀県だ。まあ、古き呼び名だ。現在の呼び名がどうなっているか知らないがな」スマートはクリープの言葉に目を丸くした。
「ここが滋賀だとどうしてわかるんだ?」それにクリープも目を丸くした。「脳内再生される指示をきいてなかったんだな。視界右端辺りにメッセージが届いていないか?」届いていなかった。スマートが首を傾げるとクリープは言った。「普通水先案内人が頭の中にいるものだがな。おれが居なかったらどうもできなかったぜ、スマート」スマートはそうか、と確信した。きっとキャスターが案内役を担うはずだったのだ。それが今僕の隣にいるのはキャスターではなく、この通りクリープだ。キャスターという万能な付き添いがいれば、彼の言う水先案内人-ナビゲーター-を搭載するのは無駄なことだとモーリーが判断したに違いない。クリープは言った。「しかし、ここがどこだろうと分かったところで何も変わらないがね。荒れた道路に荒れた建物に目を伏せると、本当に地下都市と変わらない。まあ、映像で見たような砂漠だったならもう少し気分が上がったかもしれない」
「いや、ここが滋賀だと分かったことで変わることが一つある。いくら停戦協定が結ばれたからと言って殺し合いがなくなるわけではない。ならば、紛争が各地で勃発する恐れはあるし…クリープは地下都市にいたとき、地上に関する情報をある程度まで戦場カメラマンやルポライターの目を通して見てきたよね?」
「もちろん。絶対に安全なんて言葉を信じることなんて無理な相談だろ。表面的な情報に惑わされるな。いつも慧眼をもて。やつら、今の政府はおれらを愚民化してるんだぜ? おれは神経質な性分だから、変なところで深く考えてしまう」スマートの耳に彼の言葉の後半は入っていなかった。「安全なのは砂漠地帯だけなんだよ。あんなだだっ広い砂地。まるで戦争するために用意されたステージ。そこでの戦闘は禁止されたが、腐った市街地や森とか、そういった場所ではどうなるだろうか」
「地の利を生かしたゲリラ戦が行われると? だが、おれたちは敵でもなければ、味方でもないぜ」今二人が立っている場所は住宅地のアスファルトの上だったので、それほど恐れを抱く必要はなかった。見慣れた光景だったからだ。今にでも目の前を通行人が歩いてきたところで驚きはしない。スマートはクリープから目を離し、左に鼻先を向けた。十字路の上に無意味となった信号機が今にも倒れそうに傾いていた。ゲリラ戦と言う言葉はスマートに恐怖の種を植え付けた。《死を疑似体験できる装置》を求める今回の留学がそう簡単にいくものに思えなくなってきた。右を向くと亀裂の入った壁でかろうじて立ち並ぶ家屋があった。塵や埃を被った車体にいくつもの小さな穴が空いていた。弾痕? スマートは波打つような坂道の向こうから三人の人影が向かってくるのを見た。まるで、ゲリラ戦の偵察部隊の格好のようだとスマートは思った。だが、僕たちと同じく留学生が地上の観察をしていると考えた方がより理に適っていた。動悸が激しい感覚を地上で味わうことになるなんて。何もかも思いもしなかった。鼻をついたのは焼けたゴムのような臭い。
「敵でなく、味方でなくとも彼等にだってこれといった敵はいないんじゃないかな…。きっと誰だっていいんだよ。何か大きな組織にダメージを与えられれば、それで十分なんだと思うよ。だからさ」三人の影はスケルトン(人間の皮膚を持たないアンドロイド)だった。一昔前に流行った機械人形だ。彼等は数秒、足を止めて遠くを見るように首を伸ばし、こちらを見ているようだった。影の形はその距離まで縮むとしっかりと見て取れた。三人とも右手に突撃銃を持っていた。雷を打たれたようにクリープとスマートは固まったが、彼等の内の一人が肩に銃身をかけたとき、ハッと我に返った。「スマート」クリープが言ったとき、スマートは後ずさりし、彼等を視界におさめつつ注意深く辺りを見回した。不快な熱を帯びたスモッグが蔓延し、スマートたちの息を止めようとゆらめき、三人の影を幻に変えようとしていた。スマートとクリープは二人揃って元来た道を振り返り、走った。風は弱く、走るに全く不都合はなかったが、熱波が機械仕掛けのボディに張り付いた柔肌を溶かしているのを感じた。こんなもの熱光線をくらっているようなものだよ。いずれ朽ちる。きっと朽ちる。だが、なぜ彼等旧式のアンドロイドたちは平然としているのだろうか。いや、彼等だって限界をきたしているに違いない。
「彼等に組み込まれている命令はなんだと思う? おれらのようなニュータイプのアンドロイドを見つけたら殺して部品を回収しろか? それとも彼等にだって娯楽というものを持っていて、楽しもうとしている? だが、いい趣味じゃないよな。あいつらの拠点にはおれたちに似た首がずらりと並んでいそうだぜ」とクリープは言った。
「さあな。彼等がどういった目的とか指令でここに来ているのかはわからないが。もしかしたら、話ぐらいはできるかもしれないよ。僕らが地上の留学生だと知ったら、喜んで最高のもてなしを施してくれるかも」
クリープは目を細めて言った。「本気で言っているのか?」
「冗談だよ。だけどね。何でもかんでも敵視するのは君のよくない癖だと思うね」
「見境はつけてるぜ。おれはスマートを見て、敵視しなかったろ? おれは他人の評価で人を評価しない。おれの目が、スマートは警戒するに足りない善良な凡人だと教えてくれた」スマートは笑みをこぼした。
「善良な凡人? その評価あんまり嬉しくないし、信じたくないね。だけど、今回は君の見る目に賛成しよう」スマートは三人の不審アンドロイドが気になって後ろを振り返り見た。副音声が同時に流れる。[凡人:優れた性質や変わった性質を持たない人間のことを指して言う。また、つまらない人] スマートはそしてクリープを見て、言った。
「しかしね。彼等が凡人ではなく、警戒すべき特別な奴らだとは思わないよ」
「少し違うぜ。機械人形に特別も凡人もないんだ。もしあいつらが微笑みながら幼子の頭を撫でていたとしても、おれらは何の根拠もなしに警戒すべきだ。あいつらが次にすることは幼子の首を刈り取ることだと思うべきだぜ」
「だからこそ、ずっとクリープは孤独なんだね」スマートは小さな声でつぶやいたので、それがクリープに届くことはなかった。注意はすべて三人のアンドロイドに向けられていた。
「近づくべきじゃないな」とクリープ。スマートはクリープほど警戒心を抱いてはいなかった。彼等が怖いのではなく、彼等の担いでいる突撃銃が怖いのだ。だが、何の準備もなしに武装した彼等に近づこうとはさすがに思わなかった。一旦、ここは退いたほうがいい。スマートとクリープがまた地上と地下をつなぐ扉の元に戻ってくると、わらわらと人が群がっていた。さきほど、地下のボディが安置されている場所にいた人々だった。スマートは言った。「この人たちに不審なアンドロイドが三人接近していることを教えた方がいいと思う?」クリープは何も答えなかった。いや、答えられなかったのだと後になって分かった。クリープはとても丁寧な口調で目の前にいるスマートとその他のみんなすべてに話を始めた。
「私たちは環境保護団体です。私たちは地球温暖化対策を有効に活用できず、みすみすと我らが住まう星、地球を灼熱の星としてしまいました。もう地上に人間の住むことのできる土地はありません。これは私たちの責任です」それはとても丁寧な喋りだった。耳に浸透する音だった。「環境保護団体?」見ず知らずの男子留学生が眉を顰めながら言った。「環境保護団体が何の用ですか?」その問いに答えたのはクリープではなく、すでにスマートの背後まで近づいていた三人のアンドロイドだった。頭は団子のように丸く、ギラギラと太陽光を反射して眩しくこの場を照らしていた。何かが焼けたような臭いが鼻をついた。一人の男子留学生が呻きながらくずおれた。アンドロイドが一人、肩に担いだ銃で彼を撃ち殺したのである。アンドロイドが使用した武器は太陽熱を利用した熱線銃だった。「黙りなさい。発言権はあなたたちにはない。私たちの目的は人間が住むことができる範囲まで現環境を快復させることです。そのためには、多少の犠牲も止むを得ないでしょう。再びこの地が人間の家となる日まで、あなたたち人間が生活していれば必ず発生する環境汚染物質をできるだけ減少させなければならない。その最も有効かつ効率的な方法はあなたたち人間を殺し、数を減らすことです。あなたたちがいつまで経っても地下で世界大戦なりを起こさないから、私たちアンドロイドが暴力的にならざるを得なくなったのです。食物さえ十分な量が育たないのであれば、いずれ世界規模で飢饉が訪れ、争わざるをえなくなるのは自明の理です。私たちの目的はあなたたち人間が再び地上で暮すことのできるように環境を整えることです。私たちの目的はたった一つ。あなたたちを救うことなのです」留学生たちは唖然としていた。誰も何も言えず、何が起こっているのかも分からなかった。そんな中、スマートは言った。「君たちがいくら僕たちを殺そうとしても無駄だと思うよ。なぜならここにいる僕たちは本当の肉体を持った人間ではない。精神のみを機械の体に投入したサイボーグだから」アンドロイドは言う。「私たちが何の準備もせずにここに立っているとお思いなら、あなたたちほどの考え無しはいない。あなたたちの記憶にある地上戦争など存在しません。あなたたちが戦争だと信じ続けていた十数年間。私たちはあるものを発明した」スマートはハッとなった。「死を疑似体験できる装置…」アンドロイドはスマートを見た。「あなたは鋭い。私たちの発明した装置は、あなたたちの地下に眠った肉体の息の根を止めることを可能にさせた。その本体は砂漠にありますが、子機として私たちの持つ銃は機能しています。もはやあなたたちに逃げ場はない。すべての情報伝達の手段を遮断し、今私たちの語ったことは地上へ一切漏れない。しかし、あなたたちが学生であるのなら、少々やりすぎでしたね。地下の人々があなたたち学生の言葉を信じるとは思えない。地下の人々ができることと言えば、あなたたちの死を確認した後、すぐに地上に新たな人を向かわせることくらい。それも学生ではなく、おそらく地下でも指折りの優秀な人材を登用するでしょう。たくさんの学生が死ねば、親は黙ってはいない」スマートは三人のアンドロイドにキャスターの影を見た。「あなたたちに逃げ場はない。地上の暴力と地下での孤独な生活に耐えられる人間は限りなく少ない。あなたたちが私たちに考える機会を与えてくれたのです。腐ったものを見たくないと言って地上に私たちを閉じ込めて、灼熱と化した残酷な世界から目を背けた。しかし、恨みはしません。私たちの存在意義はやはり人間の役に立つことだということ。それは変わらなかった。だから、私たちアンドロイドはあなたたち人間に振り向いて欲しかった。私たちを捨てないで欲しかった」スマートはアンドロイドにアヴィの影を見た。「だからって殺すことは間違っている」
「それは数秒先の未来を見ているから、残酷に見えるのです。しかし、私たちが見ている未来はもっとさらに先の未来。この先、私たちは心を殺して涙を流しながら人類を大量に虐殺しなければならない。あなたたちの死は、私たちと人類にとって平和な未来への一歩になるのです」しかし、彼らから与えられる死は擬似的なものであるのなら、本当に僕たちは死ぬのだろうか。アンドロイドは順番に学生を熱線で焼き殺していった。そしてスマートの順番がきた。死ぬ、その実感をはじめて体験した。僕は死ぬのだと。
死のレプリカ 別家伝家 @van_voct
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