せーぶ ざ すまいる!
れーせんさん
せーぶ ざ すまいる!
コツメカワウソ(以下カワウソ)「わーい!たーのしー♪」
ジャガー「お、今日もやってる。毎日やってても飽きないなんて本当にその滑り台がお気に入りなんだねえ」
かばんちゃん達をみなとで見送ってから数日後、カワウソとジャガーはじゃんぐるちほーへと帰ってきて今までと同じように毎日を楽しく過ごしていた。
カワウソ「たのしー事は何回やってもたのしーんだよー♪ジャガーも一緒にたーのしー♪しようよー!」
ジャガー「へっ?ア、アタシ?うーん、こういうアクティブな遊びはあんまりした事がないんだけど・・・でもなあ・・・」
以前から楽しそうに遊んでいるカワウソを見ていて気にならなかったと言えば嘘になる・・・ジャガーは何事も経験かな、とカワウソに滑り方を教わることにした。
ジャガー「え、えーとぉ。見てた感じだとこう・・・体を後ろに倒しながらお尻で滑ることを意識すればいいのかな?」
カワウソ「うんうん、そんな感じで大丈夫だと思うよー。いやージャガーはやっぱり賢いねー♪」
ジャガー「あはは、ありがと。かばんほどじゃないけどねー」
カワウソ「それじゃあさっそくー・・・いってみよー!」
ジャガー「よ、よーし・・・せぇ・・・のぉ!」
ジャガーは両手で勢いをつけると滑り台のてっぺんから一気に水面まで滑り降りていった。
ジャガー「(おっ?おおおおおー・・・!)」
スルスルスルスル・・・どぽーん!
カワウソ「おおー!いい滑りっぷりいい滑りっぷりー♪気持ちよさそー!」
ジャガー「ぶくぶく・・・ぶはー!ふいー、これはなかなか・・・!」
水中から出てきたジャガーは思った。あの風を切る感覚、落ちていく時の体がふわっとする感覚、そして水中に思い切り飛び込んだ時の感覚。これら全ての感覚をまとめて一言で例えるなら・・・やっぱりたーのしー!だろうなぁと。
ジャガー「いやーこれはすっごく楽しいね!カワウソの言う通りだったよー」
カワウソ「でしょでしょー!ジャガーも好きになってくれて嬉しいなぁ嬉しいなぁ♪」
ジャガー「でもちょーっとこの高さだと私はすぐに飽きちゃうかな?もう少し長く滑ってたいってのはあるかもしれないね」
カワウソ「うーん、そっかー・・・確かにわたしもちょっと刺激が足らないかなーって最近思い始めてるんだよねー・・・」
最近という言葉を聞いてジャガーは思わずあはは、と笑ってしまった。あれだけ毎日やっててやっと最近飽きてきたのかと。
ジャガー「じゃあさ、新しい滑り台を作ってみない?角度とか高さとか、楽しく遊べるように色々工夫して・・・アタシも協力するからさ!」
カワウソ「何それたのしそー!やるやるー♪えへへっ、橋を作ったりバスをくっつけたりジャガーと一緒にいるとたのしー事だらけだよー♪」
ジャガー「そ、そうかい?へへっ、なんだか照れくさいね!よーし、それじゃあ今日はもう一滑りしちゃうおうかね!」
カワウソ「あーわたしもやるー!わーい、たーのしー♪」
その後ジャガーとカワウソは日が沈むまで一緒に遊び、明日またアンイン橋で会う約束をするとお互いの住処へと帰って行った。
ジャガー「あーたのしかった!ふふっ、やっぱり平和が一番ってね!よし、明日もしっかりと気合入れてお仕事頑張りますか!」
~翌日~
ブォンッ!
ジャガー「おおっと!残念、そんなスローな攻撃当たってやれないねっ!」
ジャガーはセルリアンの攻撃を華麗にバク転で回避すると、ふふんと鼻を鳴らした。
先の黒セルリアン事件後、ジャガーは『皆の為に自分に何かできる事はないだろうか』とずっと考えていた。
考えぬいた(約1分)末に出した答えは『倒せると判断したセルリアンは全て倒す』というシンプルながらもジャガーらしい他者への思いやりが感じられるものだった。ちなみに彼女の強さはじゃんぐるちほーの中でも群を抜いており、野性解放すればセルリアンハンターよりも強いのでは?と囁かれているほどである。
そして今日も朝早くからじゃんぐるちほーをぐるりと回り、この先にある川・・・昨日カワウソと遊ぶ約束をしたアンイン橋付近をゴール地点にして『パトロール』の仕事をしていたのだ。
ジャガー「サイズはそこそこデカイけど動きは緩慢・・・野性解放すればアタシ一人でも倒せるかな。よっし!すぅぅぅはぁぁぁ・・・」
大きく深呼吸を一つ、ジャガーは全神経を己の内にある獣の力を増大させる事に集中させ・・・一気に爆発させた。
ジャガー「友達を待たせてるんでね・・・本気で行かせてもらうよっ!!」
瞳を金色に輝かせながら、ジャガーは目にも止まらぬスピードで駆け出した。危険を感じたセルリアンは必死に前脚を振り回したりキューブ型の謎の液体を吐き出すも、野性解放したジャガーの目には止まっているも同然だった。ジャガーは瞬く間にセルリアンに接近すると、弱点を探し始めた。
ジャガー「前脚、後脚、腹部・・・は無しか。となるとあとは・・・ここかっ!!」
ジャガーは光り輝く右腕を大きく振りかぶり、ザシュッ!という斬撃音と共にセルリアンの後脚を切断した。バランスを崩したセルリアンは轟音と共に前のめりに倒れると、弱点である石の部分・・・背中をさらけ出した。
ジャガー「お、あったあった。四足歩行するセルリアンってひょっとして背中が弱点って決まってるのかな?うーむ、わからん・・・ま、どうでもいいか!仕留めさせてもらうよっ!」
ジャガーが両の脚に力を込めて今まさにセルリアンの背中に飛び掛かろうとした、次の瞬間だった。
ミナミコアリクイ(以下アリクイ)「ひっ・・・ジロジロ見ないでよぉ・・・あっち、行ってよぉ・・・!」
ジャガー「えっ・・・?あれって・・・アリクイ!?」
ジャガーの視線の先には、いきなり目の前に倒れてきたセルリアンにびっくりしたアリクイが腰を抜かしてへたりこんでいた。そしてセルリアンはその巨大な目玉をぎょろりと動かし、今まさに彼女を捕食せんと前脚を動かし始めていた。
ジャガー「ま、まずいっ!くっ・・・間に合って!」
アリクイを救うため、ジャガーは全速力で走った。この時、彼女にほんの少しでもいつものような冷静さがあったなら・・・この行動は取らなかっただろう。
ジャガー「ごめんっ、ちょっと耐えて!せぇ・・・のぉ!」
アリクイ「ひゃっ!?はわわわわ~~~・・・」
ジャガーにジャンピング体当たりを喰らったアリクイは派手にコロコロと転がっていき、べちっ!という音を立てて木に激突した。ジャガーは横たわりながらその様子を見て『あちゃーもう少し加減してぶつかれば良かったかなあ』と反省した後、頭上に迫ってくる黒い巨大な影を睨み付けた。
ジャガー「(あー・・・流石にこの距離は避けられないなあ。ごめんカワウソ、一緒に新しい滑り台作る約束は・・・守れなかったよ・・・)」
ジャガーは心の中でそう呟くと諦めたようにゆっくりと目を閉じた。真っ暗になった視界に、今までの楽しかった出来事やそうでもない出来事が次々と浮かんできた。
(かばんやサーバルは・・・今頃どうしているのかな?新しいちほーでも元気にやってるかな?また一緒に遊びたかったな・・・)
・・・・-い、・・・デッカいz・・・♪
(そうそう、あの黒セルリアンは本当にデカかったなあ。でも皆で力を合わせて戦って・・・かばんを助けられて、本当に良かったよね)
・・・・だよぉ、あっち行ってy・・・
(いやーゆうえんちでヘラジカに絡まれた時は本当に困っちゃってねえ。まああっち行けってほどイヤじゃなかったけどさ・・・って)
ジャガー「あ、アタシ一体誰と会話してるんだ!?」
カワウソ「わーーーーーーーい!揺れてる揺れてる~~~♪たーのしーぞーーーーーー!!」
アリクイ「じゃ、ジャガーから離れてよぉ!えいっえいっ!」
目を開くと、そこにはセルリアンの目玉に覆いかぶさるようにひっついて豪快に振り回されているカワウソと鼻血を出しながら木の棒でセルリアンの前脚をぺしぺし叩いて応戦しているアリクイの姿があった。
ジャガー「アリクイ・・・と、カワウソッ!?」
カワウソ「あっ、ジャガー起きたーー!?おはよーーーーー!」
ジャガー「ぶっ!?・・・ね、寝てたわけじゃないんだけどーーー!」
こんな状況でも相変わらずなカワウソに思いっきりツッコんでしまうジャガー。セルリアンに食べられていなかった、という驚きと安堵が入り交じってつい大きな声になってしまったのは仕方のない事だろう。
アリクイ「えっと・・・ジャガー。石を・・・今の内に・・・私じゃあそこまで跳べないし・・・」
ジャガー「あっ・・・ああ、そうだね!まっかせといて、とびっきりの一発を見舞ってやるからさ!・・・ありがとね、アリクイ。本当に助かったよ」
ジャガーはアリクイの頭をモフモフと撫でると、カワウソに張り付かれて頭をブンブン振っているセルリアンを見上げた。
ジャガー「・・・当たり前の事だってのにさ。いつの間にか忘れちゃってたよ・・・最後の最後まで諦めちゃいけないって事をね」
そう呟くと、ジャガーは再び野性解放を行ない空高く飛び上がった。
ジャガー「祈ってあげるよ。次に生まれてくる時はセルリアンみたいなのけものじゃなくて・・・アタシ達と同じフレンズになれるってさ。だから今は・・・眠れえええええええええ!!」
グッシャア!パッカーーーーン!
ジャガーの強烈な急降下攻撃は背中の石に見事命中、セルリアンは爆発四散した。その時の衝撃でふっ飛ばされたカワウソはアリクイと衝突し、二人は揃って地面に大の字で倒れる形になった。
ジャガー「カワウソ!アリクイ!だ、だいじょう・・・ぶ?」
アリクイ「・・・うううー、今日は厄日だぁ・・・」
カワウソ「あいたたたー・・・えへへっ、平気だよー♪それよりもっ、ジャガーお手柄だね!あんな大きなセルリアンを一発でパッカーンさせちゃうんだから!」
ジャガー「カワウソとアリクイのおかげだよ!アタシ一人の力じゃ・・・どうにもならなかったわけだし・・・」
その台詞を聞いたカワウソは腕を組みながら、うんうんと頷いた。
カワウソ「たしかにーあの場面はアリクイを助けに走るより背中の石を攻撃すればそれで解決だった気はするよねー」
ジャガー「み、見てたの!?」
カワウソ「途中からだけどねー。だってわたしの家、ここのすぐ近くだし♪最初は戦ってるの邪魔しちゃいけないなーって思って木の上でおとなしくしてたんだけどジャガーが危ない!って思ったらいつの間にかガバーッ!って感じでセルリアンに飛びついちゃってたの!ちょっと怖かったけど、おもしろかったー♪」
ジャガー「・・・怖い思い、させちゃったんだね。ごめん、カワウソ・・・」
ジャガーはカワウソとアリクイに今日まで自分がじゃんぐるちほーの平和を守るためにパトロールをしていたことを話した。
カワウソ「そっかー・・・ジャガーはわたし達のためにいっぱい頑張ってくれてたんだねー!ありがとうジャガー♪」
アリクイ「今までちょっと怖いな、とか思っててごめん・・・ジャガーは・・・優しいんだね・・・ありがとう・・・」
ジャガー「うん・・・でも、今日の事で思い知ったよ。アタシの力なんてこんなものなんだって・・・いざという時に冷静になれないし、すぐ諦めるし・・・そんなんで皆を守るって・・・何言ってんだか・・・あはは、情けないったらないよ・・・」
うっすらと涙を浮かべながら目を伏せるジャガー。カワウソはその涙をそっと人差し指で拭いてあげると、優しい口調で語りかけた。
カワウソ「・・・わたし、ジャガーと一緒に遊ぶのすっっごく大好きなんだ。だからね、もしジャガーがセルリアンに食べられていなくなっちゃったらって考えたら・・・とっても悲しい気持ちになっちゃうよ。当然だよね、だってわたしたち友達なんだから♪」
ぎゅっ・・・
ジャガー「カワウソ・・・」
アリクイ「わ、わたしも・・・ジャガーと一緒にいっぱい遊びたい・・・お友達になってもいい・・・よね?」
ぎゅっ・・・
ジャガー「アリクイ・・・!」
二人の柔らかい腕がジャガーの体を優しく包み込んだ。
『一緒にいてくれるだけでいいんだよ』『無理しなくてもいいんだよ』
そんなストレートで温かい感情が流れこんできて、拭ってもらったばかりだというのにジャガーの目には再び涙が溢れてきてしまった。
ジャガー「うん・・・うん!遊ぼうっ・・・滑り台とかで・・・一緒に・・・楽しく・・・遊ぼう・・・!」
カワウソ「!!!滑り台っっっ!!」
『滑り台』というワードを聞いた瞬間カワウソの背筋がピーンと伸びた。彼女の脳内で『たーのしー!』物質が大量に分泌された合図だ・・・!
カワウソ「そーだよジャガー!あの滑り台よりもっともーっと面白いの作ろうって約束したじゃない!セルリアンなんかどーだっていいからっ早く一緒につくろーよー♪そうと決まればー・・・だーーーーーっしゅっ♪」
ジャガー「え、ええっ?ちょっとまっ・・・ってはやっ!もうあんな所にいるっ!?」
チーターもびっくりの速さで茂みを豪快に突っ切っていくカワウソを見てジャガーは思った。じゃんぐるちほー最強は実は『たーのしー!』状態のカワウソなんじゃないかと。
ジャガー「えーっと・・・それじゃあ、アタシ達も行こっか?」
アリクイ「うん・・・これからよろしくね、ジャガー」
ジャガー「こちらこそ!・・・おーい、カワウソー!待ってってばー」
~エピローグ~
その後、ジャガー達は半年をかけてアンイン橋の近くに巨大な滑り台を完成させた。高速でらせん状に落ちていくエキサイティングなもので、連日のようにたくさんのフレンズが遊びに来るほどの人気で今ではすっかりじゃんぐるちほーの名所になっていた。
ジャガー「はいはーい、押さないで押さないでー!焦らなくても滑り台は逃げたりしないんだからねー!ほらそこっ!梯子はゆっくり登らないと危ないだろっ!怪我してからじゃ遅いんだからねっ!」
ジャガーは今、この滑り台の管理人として順番待ちのフレンズを整列させたりビーバーやプレーリーと協力して安全性を高める工事を行なったりと多忙な毎日を送っている。カワウソとアリクイもたまーに手伝ってくれる事があるそうだが、大体は他のフレンズ達にまじって遊んでいる事がほとんどだった。だから1日が終わる頃にはいつもクタクタだったが、彼女はとても幸福だった。
『皆の笑顔を見たい、皆の為に頑張りたい』という夢を叶える事ができたのだから・・・
せーぶ ざ すまいる! れーせんさん @reisensaan
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