イェェェェイ!!!テンション上げていこうぜェェェェェェェ!!!!!!!!

ちびまるフォイ

テンション高くないと人間じゃない

「では次の方どうぞ」


「イェェェェイ!!! 面接よろしくお願いしまぁぁぁッス!!!」


「いいねぇ、テンション高くて元気じゃないか」


「元気があればなんでもできるゥゥゥ!!!! ジャスティス!!!」


その瞬間、脳裏でバッテリーが切れる音が聞こえた。


「あ、よろしくお願いします……」


「なんだなんだ。急にテンション下がったじゃないか。

 さっきまでの元気はどうした?」


「いや……その……」


その面接は落ちた。

やっぱり今のご時世テンションが高くないとやっていけない。


尻尾のケーブルをコンセントに刺してテンションを充電して思った。


「やれやれ。俺としたことが面接前に充電し忘れるなんて」


完璧に充電し終わったところで2社目の面接に挑む。

今度はテンションをしっかり充電したので途中で尽きることはない。


「イェェェェェェイ!!!! よろしくお願いしまァァァーーッス!!」


「おおおおお!!! 元気がいいねぇぇ!!!! 採用!!!」


俺の考えはぴたり的中して念願の内定を勝ち取った。

辛かった就職活動から足を洗えると思っていたが、待っていたのはさらなる地獄。


「みなさぁぁぁぁん!! 盛り上がっていきましょぉぉぉ!!!」


毎晩のように飲み会に参加してはテンションマックスで叫ぶ。

テンションがコンセントから充電できるようになってから

誰もがテンション高く、逆に低い人間は病気すら疑われる。


周りに認めてもらうには俺もテンション高くなければいけない。


「はぁはぁ……もうテンションからからだ……」


すっかりテンションを使い切って家に帰りコンセントに接続する。

いつ電話がかかってくるかわからないので、テンションは常に高くしなければ。


「……あれ? ずいぶん充電に時間かかるなぁ」


自分の尻尾を見ながらわずかな変化に気が付いた。

普段なら終わっている充電でも少し長くなっている。


そのときはまだ勘違いかと思ったが、徐々に充電時間は長くなり

逆にテンションが尽きる時間は短くなっていった。


「先生どうすればいいですか? テンションが溜められなくて……」


医者に相談することにした。

これ以上の変化はさすがに見て見ぬふりできない。


「そうですね!! これは充電のしすぎですね!!!」


「充電の……しすぎ?」


「あなたはテンションを充電しすぎたんですよ!!!

 充電回数が増えれば増えるほど、体のテンションを溜める部分が疲れて

 テンション溜められる量が減ってしまうんです!!!」


「そんな! 困ります! テンション低い人間に生きる場所なんて……」


「1つだけ方法ありますよ!!!」

「本当ですか?」



「人間やめろ!!!」


「ムチャ言うな!」


テンション高い医者に地獄の宣告をされたその足で、

家電量販店でポータブル充電器をいくつも買った。


「充電器20個お買い上げですね!!! ありがとうございまーーす!!」


「「「 フゥ~~~~!!! 」」」


店員ですらテンション高く接客している。

テンションの総量が減ったとしても充電器さえあればなんとかなるはずだ。


維持できるテンションの時間はぐっと短くなったが、

そのつど充電して難を逃れ続ける日々。


限界が来るのはわりと早かった。


「あれ……? おかしい……全然充電できない……!」


何度ポータブル充電器をつなぎ直してもテンションを充電できない。


"テストテスト……聞こえますかぁぁ!!!"


「その声は……お医者さんの先生!」


"今、テンションを上げてあなたの頭に直接しゃべってるYO!"


「先生、実はテンションが溜められなくなってるんです。

 これじゃずっと俺は低いテンションのままです」


"それは君のテンションが寿命になったのさ!!!!

 もう尻尾から充電することはできない! 諦めな! グッナイ!!!"


それきり先生の声は聞こえなくなった。俺は血の気が引いた。

その夜、いつものように飲み会に連行された。


「えーー……それじゃ歌います……」


「テンション低いぞーー!」

「もっとテンション上げろよーー!」

「盛り上がらねぇぞ――!!」


「あ、あはは……」


苦笑いするしかなかった。

二度とテンションを上げられなくなった俺は徐々に社会から居場所がなくなり

会社も解雇されて今に至ってしまう。


「君ね、テンション低いんだよ。君がテンション低いから

 周りの人のテンションも低くなっちゃうからね、うん。解雇」


「もうだめだ……テンション低い人間に居場所なんて……」


低いままのテンションで再就職先を探した。

でも自分でも結果は見えていた。


「よろしくお願いします……一生懸命がんばります……」


「君、テンション低いね」


ああ、終わった。気付かれた。

自分では最大限テンション上げていたのに。


「これは……その……もともとなんです……。

 テンション溜められないからだになってしまって……」


「ずっとその調子?」


「すみません……」


「そうか……」




「よし、採用!!」


面接官の言葉に耳を疑った。


「ど、どうしてですか? 俺みたいなローテンション人間を……」


「低いテンションだからいいんじゃないか」



「うちみたいな葬儀屋は常にテンション低くないと

 不謹慎だと言われるからね。君はまさにうってつけの人材だよ!!」

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