罪作りな完璧さ

くどい描写がないのに、まるで絵をみたかのように状況が目に入ってきて、世界に浸れてしまう。
あっという間にヒロインと自分が置き換わってしまうような錯覚すら覚え、切なくなる。
切なくも美しい愛の歌を歌い聞かされたような、うるっとした気分です。

緋蓮は悲恋にかけているのかな?

火の国、燃えるような情熱の人々、そこに嫁いで来た病弱な娘。
硝子細工の技量欲しさの結婚……繊細ですぐに壊れそうな硝子は、まるでヒロインのようでもあり、一見、この国にはそぐわないかのように思われる。「燃え盛る炎と形を変えていく硝子」が、彼女の変化を表しているかのよう。

これはこれで、十分堪能できるのですが……。

短編でこれで終わりと知りつつ読んでも、完璧なプロローグを見せられたような感覚に陥って、いつか気が変わって続きを書いてくれないかな? と思ってしまう、ちょっと罪作りな作品です。