第7話 観客がいない『自由』

LARPは演技を元にコミュニケーションを楽しむものですが

他の演劇系コンテンツとは決定的に違う点がひとつあります。


それは

『観客がいない』ということ。


LARPは参加者、つまり『その場にいる全員』が

何らかの形で役を演じます。

観客……つまり部外者が見るということがない。


もちろん、LARPを知りたい人が『見学』に来ることはありえますが

それはあくまで見学であり、見物でもなければ鑑賞でもありません。


要するに、LARPにおける演技は

『人に見せるためのものではない』のです。


この特長により

LARPは演劇ともインプロとも営業研修におけるロープレとも

異なる存在になっています。


演劇、演技をすると言ったら

誰もが思い浮かべるのが

学芸会や子ども会での演技……

親やら友達やらに『見られている』状態ではないでしょうか。


ガッチガチに緊張して、

セリフ覚えてるかな、変な動きしてないかな、この役どう思われるかな……

いやがうえにも『他人の目』を気にした上での演技が

多くの方が『演技する』と言われたときに想像するもの。


営業研修などでは

お客様側と営業マン側に分かれて

それぞれの立場で交渉演技をする

『ロープレ』がありますが

これは演技をしつつ、相手の振る舞いを観察して

フィードバック(アドバイス)することが多く

やっぱり『どう見られるか』がポイントになっています。


『素の状態の人に

 演技している自分を見られる』……

根っからの演技好きでなければ、これは結構なプレッシャーです。


しかし、LARPにはよい意味で

『素の状態の人』がいません。


全員、演技しています。

誰かに見せるとか関係ありません。

当然、正解も不正解もありません。

むしろ素に戻るほうが異質です。


だから安心して演技ができるんですね。

誰もあなたの演技をジャッジしないし

素の状態で冷やかしたりしない。

むしろ、素でいる方が違和感がある(笑)


「このキャラはこういう振る舞いをした方が雰囲気が出るな」

といった調整は、本人が自分で気付いてやればいいことで

誰かから指示やアドバイスが飛んでくるものでもありません。


だからこそ

純粋に演技を楽しめるし

演技を通しての自己理解が深まるんです。


LARPは『あえて観客を入れない』ことで

『参加者全員が、目いっぱい演技を楽しむ環境』を

作り出しているのです。

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私設・LARP解体新書 ちまころ @chimakoro

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