お昼ごはんの話
礫瀬杏珠
第1話 黄色くてフワフワな奴
学校の購買。それは生徒達の戦場。
昼休みのチャイムがなった瞬間にどれだけ効率的にお昼を手に入れられるか。
財布を手にして教室の机をジグザグに通り抜け廊下に出てからのスタートダッシュ、曲がり角で減速せずに階段を降りる!
そんなアクティブな2年間を過ごし、私は高校三年生となっていた。
三年生になってからの昼は、ホームルームが挟まれる。それは即ち購買戦争における死を意味する。
ココ最近の私はコンビニ食を食べていたのだが、今朝は鉄道もバスも遅延。普通なら十分前に着くはずなのに教室に駆け込んだ途端にチャイムがなるほどの遅延だ。
今日の私のお昼は購買になってしまった。
地味に長いホームルームを挟みようやく昼休みが訪れる。
財布を手に、窓から中庭越しに購買を眺める。よし、まだのこっている!
一気に加速して階段を降り、購買に到着!
残っているのは僅かなサンドイッチと菓子パン。弁当類は売り切れのようだ。
サンドイッチのケースを眺め、私が狙ったのは……卵サンド。
ふわふわのパンに挟まれ、ずっしり重たい2つ入りの卵サンドである。コンビニでしか買ったことが無いが、これは美味しそうに見えた。(他のはイマイチだ)
無事に卵サンドを手に入れ、自販機で購入したのはビタミン系の炭酸飲料。
教室に戻り、ゆっくり包装を解く。
ずっしり、しっとり、そんな感触が指先から伝わる。
もぐり。
一口を少し大きめにかじり、咀嚼する。
私は目を見開く。
濃厚な黄身の味、混ぜられた細かい白身の感触が楽しい。
卵焼きではなく、ゆで卵を潰して作るタイプの卵サンドだ。舌先にザラりとした感触が残る。あっという間に食べ尽くしてしまう。
美味しい。これは美味しい。
傍から見ればただ、昼を食べているだけかもしれないが、私の脳内では『卵サンド最っ高!』祭りが開催されている。
ゆで卵は嫌いだが、卵サンドは美味い。
少し落ち着いたところで炭酸飲料を飲む。
濃いもったりした卵が爽やかでケミカルな味に流されていく。
「はあ、」
そう息をついて、二つ目を食す。
「購買も侮れませんな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます