「ディストピア」と聞くと、地獄の様な管理社会を連想する人が多いと思う。
だが、この作品で語られる国々はそうではない。大抵の場合、住民は幸福の中に生活している。中には失敗例はある物の、そういう場合も息苦しい抑圧下にある訳ではない。
ただ、外部からの来訪者である主人公の目から見ると、「何かが変」なのだ。
勿論、状況が成立するには過程がある訳で、個々の「ディストピア」が築き上げられた経緯はいずれも納得出来る物である。いずれも住民の皆を幸せにする為に出来上がったシステムであり、軍や秘密警察によって強制された物ではない。
結局の処、幸福は主観でしかないし、人として固守しなければならない絶対の物など存在しないだろうと考えさせられる良作である。