パラレルソルジャー

9741

第1話

 パラレルワールド。 

 この世界とは違った、もしもの世界。 

 ファンタジーな魔法がある世界、殺伐とした世紀末な世界。パラレルワールドには無限の可能性がある。 

 だが、そんなパラレルワールドにも欠点がある。 

 他のパラレルワールドから、異物がこの世界に入り込んでしまうことがある。 

 ん? 言っている意味が分からない? 

 そうだな、分かりやすく言うと……。


『ギャクラガァアアアアアア!!』 


 異世界のモンスター達が、この世界に迷い込んでしまうことがあるのだ。


「あのモンスター達の形状から推測するに、ファンタジーの世界から混入物ですね」 


 俺のバディであるククルが、誰でも分かるような推測を俺に伝える。


「とにかく、削除してください、ケンジさん」

「りょーかい」 


 俺はモンスターに対峙する。 

 パラレルワールドからの異物をこの世界から削除するには、破壊するしかない。もしその混入物が単なる小動物ならまだいい、この世界の武器で十分対処できる。 


 だが今回のような大型モンスターの場合、特殊な方法を用いて、削除を行う。


「変身!」 


 俺の周りを光が包む。 

 光が止むと、俺は銀の兜と鎧を身に纏い、大剣を携えた姿となった。 


 この姿はパラレルワールドの俺の姿。ファンタジー世界の俺の、勇者の力。


「ファンタジー界のモンスターにはファンタジーの勇者で対抗ですか。単調ですね」

「オーソドックスと言ってくれ」 


 俺は、パラレルワールドの自分の能力を一時的に借りて、混入物と戦うことができる。これがさっき言った特殊な方法である。 


 俺は大剣を振るい、モンスターと戦う。 

 勇者の俺の斬撃にモンスター達は次々と倒されていく。


「次はこいつだ! 変身!」 


 再び俺の身体を光が包む。 

 光が止むと、俺は鋼鉄の身体、火器を備えた姿になる。 

 この姿は、機械世界の俺。そこでの俺はサイボーグらしい。


「全弾発射!!」 


 俺は身体に装備された、ミサイル、砲弾、ビーム光線、ありったけの攻撃を一斉に放った。 

 砲撃の雨あられに、モンスター達は全滅した。


「ふぅ、削除終了っと」

「お疲れ様です」 


 ククルが俺に簡単なねぎらいの言葉をかける。


「なあ、ククル」

「なんですか?」

「この戦いに終わりってあるのかな」 


 俺は普段から疑問に思っていたことを、ククルに投げかけてみる。


「おそらく無いですね。混入物が無くなるということは、パラレルワールドが無くなるのと、同意義ですから」 


 俺はため息をつく。 

 混入物が来るのは勘弁してほしい。けどパラレルワールドまで消えることはない、と俺は思う。


「まあ頑張ってください。この世界の私」

「へいへい、もちろん」 


 ちなみにククルも、パラレルワールドの俺。他の世界からやって来た、女の俺である。

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