擬人化薬

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擬人化薬

「ついにできた……長年の研究の末、ついに完成したぞ!」 


 科学者ヒロトはビーカーに入れられたピンク色の液体をうっとり眺める。 


 ヒロトは天才科学者だった。だがその傲慢な性格ゆえ、女性に全くと言っていいほどモテなかった。 


 だからヒロトは作ることにした、自分に好意を抱く女性を。 


 この薬、名前は擬人化薬。この薬をかけたものは、擬人化、つまり人間になる薬だ。

 

 そして擬人化されたものは必ずヒロトに懐く。 

 ちなみにガラス製品には効果がない。ゆえにビーカーは擬人化しない。


「さて、何にかけようか」 


 周りにあるものから、何を擬人化しようか、わくわくしながら考えるヒロト。 


 その時だった。 


 突如揺れる研究室。

 地震だ。震度2くらいの揺れが起こったのだ。 


 ふつうなら大したことのない揺れなのだが、薬が完成したことヒロトは浮かれていたため、突然の地震にバランスを崩してしまった。 

 

 そのせいで擬人化薬が、部屋に飾っていた観葉植物にかかってしまう。 


 発光する植物。 


 光が収まると、植物は人間になった。


「ヒロト様……」 


 元々が植物だったからか、肌は緑色だった。 

 当初の予定とは若干違ったが、実験が成功したことにヒロトはとても喜んだ。


「お前、名前は?」


「はい。ホウカマルと申します」


「ホウカマルよ。私のことをどう思う?」


「はい。とても素敵な殿方だと思います」 


 彼女の言葉に思わずニヤけてしまうヒロト。


「よし、ホウカマル。まずは敬愛の印に私にハグしてみなさい、思いっきり」


「思いっきり、ですか?」


「思いっきりだ」


「分かりました」 


 ヒロトの命令通り、ホウカマルは勢いよく彼に抱きついた。 






 ちなみに、ホウカマルとはサボテンの一種である。

 

 研究所にヒロトの苦痛の叫びが響いた。

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