結婚式への案内状
六月の中旬ごろだった。
私に、1通のパンフレットが届いた。
内容は、私が昔付き合っていた男性の結婚式の案内だ。
彼は比較的裕福で、なんでも本格的に取り組む人なので、パンフレットも相当こったものだった。
ハート型の白い紙に、真っ赤な文字で結婚式の日時や場所などが細かく書いてある。
『7月30日 午前10時から開始予定 ご料理、お飲み物はこちらで準備します。』
まるで何かの企業から送られてきたかのような作り込みに、私は彼と付き合っていたころを思い出した。
付き合っていたころは、ケンカばかりでそれはもう毎日別れたくてしょうがなかった。
だけどそれでも別れなかったのは、やはり彼のことを愛していたからだろう。
付き合い出してから1年と六ヶ月ぐらいで、大げんかをした。
2人とも白熱してしまって、包丁を取り出したぐらいだ。
私が
「あなたを殺してやりたいぐらいよ。」
というと、負けず嫌いの彼も
「ああ、僕も殺してやりたいさ。」
とすごい顔で叫んだものだ。
今思えば、笑い話だ。
そういえば別れることが決まった時も、彼は別れぎわに
「いつか本当に殺すから。」
なんて笑って言ってた。
ほんとに、彼はギャグのセンスも高いし、別れることで泣いていた私を笑わてなぐさめようともしてくれた。
私が涙目になっていると、郵便ポストにパンフレットとは違う、1枚の便せんが入っているのを見つけた。
内容を見てみると、彼からの手紙のようだ。
結婚式の案内状、ちゃんと届いたかな? 僕結婚することになったよ。
式に来てくれるって言ってくれてありがと!
のんびりとした式にするから、ぜひ結婚式の日はくつろいだ格好をしておいで。君何でもにあうから、どんな服か楽しみにしとくよ。
こんな手紙いきなり送ってごめんよ。全然、ろマンチックでも何でもない手紙で、ごめん
すきだった君に、伝えたかったんだ。
私は手紙を見た瞬間、背筋が冷たくなった。
結婚式には、絶対に行けない。
行ったら―――……
ニワトリはブウと鳴く 木々 たまき @koparu
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