後日談
後日談
ともかく、朧の件については一件落着、ということになった。
そして月曜日。
月城さんは学校に姿を現さなかった。誰一人、その理由については聞いていないそうだ。
「このまま、もう二度と来ないって事もあり得るよな」
「確かにね。結局、家だの資金だのは朧頼みだったと思うからね。だとすると瞳にとってはいろんな意味でつらい結末になっちゃったかな」
昼休み、響子と机を付き合わせ弁当を食べながら、そんな話をしていた。もちろん、周りには聞こえないように声のトーンを落として。
「結局は瞳も私たちと同じただの高校生だよ。たとえどんな力があっても、どんな生まれ方をしていても、十六、七歳の女の子だって事に変わりはないはずだもん。そういう意味では私も、瞳も、明も、みんな同じくらい無力だよ」
「出来ることなら力になりたいけど、何が出来るってわけでもないからな。悔しいけど、俺たちには荷が重すぎる」
逃げるとか、目を背けるとか、見捨てるとか、そういうレベルの問題じゃない。本当に、どうしようもないのだ。今の俺たちは結局無力な存在でしかないことを痛いほど実感していた。
「せめてもう一回ぐらい落ち着いて話がしたかったな。結局俺は、何一つ月城さんの本心を知ることが出来なかったわけだし」
俺が知っている月城さんは、朧の計画のために動いていた姿だけだ。最後に、俺のことを庇ってくれた、あの時以外は。
「私だってそうだよ。もっと色々瞳のことを知りたかった。まあ、もう二度と会えないって決まった訳じゃないんけどさ」
「それもそうだな。そういえば話は変わるけど、響子、怪我はもう大丈夫なのか?」
昨日の響子は随分と切り傷だらけだった。普通の人間なら重傷と言っても差し支えないほどに。
「うーん、まあ、大体治ったって感じかな。ほら」
そう言うと響子は、腕をまくってみせた。白いミミズ腫れの様な痕がいくつも見えるけど、まじまじと見ない限りは分からないだろう。それに、この回復速度なら数日で完全に傷はなくなるはずだ。
「ん? どうしたの明、暗い顔して」
それでも、痛ましい傷であることに変わりはない。ましてや、その責任の一端は俺にあるのだ。暗い顔にもなる。
「今更だけど、ごめん響子。俺が悪かった。そもそも俺が響子に無茶なことを頼んだりしなければ」
「ハイ、そこまで」
そう言って響子は、俺の言葉を強制的に打ち切った。
「その話はもう無し。瞳をどうにか説得して連れてきてほしいって頼んだのは確かに明だけど、私はそれを了解したし、切りつけてきたのは瞳だし、瞳にそれを命令したのは朧だし、そもそも正面から斬られに行くような戦い方を選んだのも私自身だし……。だから、誰が悪かったとか、誰の責任とかそういうのを考えるのも、はっきり言ってめんどくさいの。そんなわけでこの件に関してはもうここまで。分かった?」
「ああ、分かった」
許された、なんて言い方が正しいのかは分からない。だけど、少しだけそんな気がした。
「そうだ、どうしてもって言うなら、他の場所のも見せてあげようか?」
響子はそんなことをいいながら、ワイシャツのボタンに指をかけ、ってちょっと待てっ!
「落ち着け響子、いったい何をしているんだ!」
「ふふふ、さあね、いったい何をしようとしているんだろうね? 明は私が何をしようとしたと思ったのかな?」
からかうように響子がそう言った。いや、実際にからかってるんだろうけど。
「ねえ、明。もし私がこのままシャツをはだけたとして、明は私のそんな格好、見てみたい?」
「少しぐらい頭を働かせて考えろ、今は昼休みでここは学校の教室だ。と言うか、誰かにこんな会話を聞かれてどう釈明すればいいと思ってる」
「じゃあ別の場所で、私と明が二人っきりだったとしたら? ねえ、どうなの?」
「そりゃ……、まあ……、見たくないと言ったら嘘になるけどさ」
マジでどうしたんだ!?
らしくもないと言うか、普段の響子からしたら考えられないような言動だ。
「ふぅーん、そうなんだ」
「でもな、もし仮にそんなことしてみろ。俺だって思春期真っ盛りの男子高校生だ、その時何か間違いを犯す可能性は一切否定できないぞ。たとえ相手が響子だったとしても」
「何か最後の一言が微妙に引っかかるんだけど」
「ともかく、もしそんなことになってしまったらどうするんだと、俺は言いたいわけだ」
世の中俺みたに紳士的なヤツばかりじゃないんだ。
少しは自分が女性だという自覚を持ってくれ。あるいは、俺に対してだけ無自覚的に行動してるのだとしたら、それはそれで少し悲しい。
「全力でブン殴る」
「……まあ、そうなるな」
響子の返答は実にシンプルだった。女子力(物理)みたいな答えだった。
「人狼の力を甘く見ないでほしいよ」
「デスヨネー」
……少し意外だった。てっきり響子にとって人狼、いや獣化能力って言った方が正確なのか、ともかくその力は禁忌のようなものだと思ってたけど、案外そうでもないみたいだ。
「ともかく、だ。響子は少し軽率すぎる。これは幼なじみとしての忠告だ」
「分かった、分かった。だからそうムキにならないでよ。冗談だって」
「生憎おれはそういう冗談に慣れてないんだ」
「うん、知ってる。だからやってみたんだよ。おもしろそうだから」
「勘弁してくれ……」
×××
……まったく、何やってんだろ、私は。自分でもバカらしいと思う。何が『私のそんな格好、見てみたい?』だ。正直言って引くよ。ドン引きだよ。
明がこういうことに耐性がないのは知ってるけど、私だって同じだ。マンガに出てくるような、乙女チックなラブロマンスなんて、生まれてから一度だって経験したことない。明がああいう挑発に対して、乗ってこないことが分かった上でも、正直言ってかなり恥ずかしかった。痴女か、私は。自分が色目を使って人をからかうようなキャラじゃないって事ぐらい分かってる。ガサツで色気のない女だなんて、他人に言われるよりも先に自分でわかってる。ましてや私は人間ですらない化け物だ。
自棄になってたところはある。自分が人間じゃないと思えれば、もう二度とここに帰れないと分かれば、自分の裸を見られるくらいどうでもいいと、そんな風に思っていた。夜、屋上で、明に正体を見せたあの時がまさにそうだった。だから、今みたいな明の反応は、正直言って少し嬉しかった。私の正体を知ってるのに、人間の女の子として見てくれるのが嬉しかった。
ああ、いや、ちょっと違うか。それ以上に明は私のことを『狗井響子』として見てくれた。私がどんな力を持ってるとか、そういうことも含めての『狗井響子』として接してくれている。もしかしたら気を使わせてるのかもしれない。私の境遇に同情して、それで優しくしてくれてるのかもしれない。表面上取り繕ってるだけで、実は内心嫌われてるかもしれない。
でも、今はそれでもいい。結局私は弱いんだ。だから今だけは、そんな明の優しさに甘えていたい。例えその場しのぎにしかならなくても、今はそれでいい。
×××
火曜日の放課後。
俺と響子は唐突に、上森先輩に呼び出された。
「しかし、超常現象研究同好会、か」
「なんていうか、狙ったかのようなタイミングだね」
「実際狙ったのかもしれないな」
いろいろなゴタゴタがあってから約一週間というこのタイミングで、その渦中にいた人間を集める場所が『超常識現象研究同好会』だというのは、偶然だと言われる方が怖いくらいの、あまりにも出来すぎている話だ。
「どーゆーこと?」
響子は俺の返答に対して怪訝そうな表情を見せた。
そう。
もしもこれらが偶然じゃないのだとすれば、俺たちをこの場所に呼んだ『彼女』は俺たちの今の状況を、ある程度まで把握しているということになる。だけど、本当にそんなことがあり得るのだろうか。
……分からない。
だけど、直接会って話を聞ければ、すぐに結論が出るはずだ。
だからこそ俺はこう返答する。
「行けば分かるはずだ」
×××
俺たちは先輩に指定された教室の前へと到着した。
俺と響子は一度だけ視線を交わしあった。その後俺は軽く深呼吸し、教室のドアをノックする。
「失礼します……!?」
「ん? どうしたの明」
響子の怪訝そうな声が背後から聞こえてくる。
その答えは教室の中にあった。いや、『居た』と言うべきか。
教室に入った俺と響子は、そこに『彼女』が居ることをしっかりと確認した。
「こんにちは。賀上君、狗井さん」
長く綺麗な黒髪、それと対照的な透き通るような白い肌、整った顔立ち、上品でありながら蠱惑的な笑み、すらりと伸びた四肢。
間違いなく、月城瞳その人だった。
「月城さん、どうしてここに!?」
「瞳、どうしてこんなとこに!?」
俺と響子は、ほぼ同時に、まったく同じ疑問を口にした。
「たぶんあなたたちと同じよ。上森とかいう2年生の先輩に呼ばれたの。それと、引っ越しに少し手間取ったので、昨日は休ませてもらったわ」
やはりここに来た理由は俺たちと同じか。だけど、それよりも気になることがある。
「引っ越しって、どこに、どうやって?」
「狗井さんと同じマンションよ」
そんな月城さんの言葉に対して、合点がいったという感じで響子が声を上げた。
「昨日何か上が騒がしかったのはそのせいか!」
今までの拠点として使っていたホテルから引き払って、マンションに引っ越してきたそうだ。面倒なことになりそうなときは、吸血鬼の力で催眠術をかけることで切り抜けたようだ。どうやら朧は活動資金として随分とため込んでいたらしく、それを当分の間は使っていくらしい。
なんていうか、何だろう、すごく拍子抜けな感じだ。俺たちが勝手に心配してただけだったみたいだ。
「……ねえ、賀上君」
月城さんが俺の方へと体を寄せ、甘い声で耳元で囁いた。
「私の部屋、いつでも遊びに来ていいわよ。そうすれば、誰にも邪魔されずに、二人っきりで……って、ちょっと、何するの狗井さん。離しなさい、……痛い、手首痛い、あと肩も、痛い痛い早く離して狗井さん」
途中で響子に関節を取られ、そのまま引き剥がされた。
「何言ってやがるのかな、この色ぼけ女は!」
「離しなさい、そして黙りなさい、この狼男!」
「狼『男』!? それはさすがに訂正してもらうよ!」
「あら失礼。あんまりにも粗野で、ガサツで、色気がなくて、暴力的なのでつい。ごめんなさいねワンコちゃん。でも、賀上君を誘惑しようが、籠絡しようが、そんなのは私の自由よ。貴女から口出しされるいわれなんて無いわ」
「な、わ、わたしはただ、朝っぱらから往来のど真ん中で、変なことを言うなって言いたいんだよ! 黙ってればクラスの人気者なんじゃないかな。怪奇、モスキート女!」
「モ、モスキートって、蚊!? 大体何よそのつまらないホラー映画みたいな呼び名は! せめてコウモリ女とかもうちょっと言いようがあるでしょ!」
お互いに掴み合いながら謎の悪口合戦が展開されようとしていた。と言うか月城さん、論点はそこでいいんですか?
「月城さん、響子も、二人とも落ち着いて」
「賀上君は少し黙っていてください!」
「明はちょっと黙ってて!」
二人からほとんど同じタイミングでそう言われた。もしかして仲いいんですか、お二人さん。
まあ、そんなことよりも、だ。
「どうやら先輩が来たみたいだぞ」
俺は振り返りつつそう言った。響子と月城さんも俺と同じように、開かれた教室のドアの方へと視線を移した。
「やあ、少し遅くなってしまって悪かったね。一応、先に簡単な自己紹介をしておくよ。私は上森久遠、二年生だ。所属は合気道部と超常現象研究同好会。以後よろしく頼むよ、後輩諸君」
×××
上森久遠。
この先輩こそが、俺たちをここに呼んだ人物だ。
上森先輩は少し風変わりな人物だ。
オカルトや都市伝説にやたらと詳しくて、実家が神社で、そこの巫女らしい。その上本気なのか冗談なのか分からないような口調で、『私は魔法が使える』などということを言っている。それも結構な頻度で。
……あれ? 冷静に考えてみると、ちょっとどころか随分風変わりな人なのか?
上森先輩は満足そうな笑みを浮かべながら言った。
「どうだい、賀上君。少しは私の話を信じる気になったかい?」
先輩の言葉はほとんど前置きも無い唐突なモノだった。だけど、その質問の意図するところは何となく分かった。
「そうですね……。少し順番はおかしいかもしれませんけど、魔法云々に関しては今のところ保留です。まだ証拠がある訳じゃありませんから。だから、正直に言うと先輩の話を信じた訳じゃありません」
「なるほど、なかなか手厳しいね」
先輩は少し胡散臭そうな笑みを浮かべながらそう応じた。
先輩は手厳しいと言うけど、俺の言葉は間違いなく正論だ。
だってそうだろ?
少し考えれば分かるようなトランプマジックを見せられて、それで「なるほど、あなたは、魔法が使えるんですね!」なんてリアクションが出来るはずがない。
「でも、信頼は出来る、そう思いました。特に根拠なんて無いですけどね」
「なるほど。だけど、なかなかいい判断基準だ。この直感という奴はなかなかに侮り難いモノでね」
「で、いったい何の用事ですか、先輩」
俺に続いて月城さんが言った。
「そうよ。私にだって、ここへ来るように言っただけで、まだ何も話していないじゃない。全員がそろったら、ということだと思って温和しく待っていたのだけど? そもそも、先輩はいろいろと知ってるみたいな口振りだけど、私たちのことをどれくらい知っているのかしら?」
月城さんの質問に答えるよりも先に、先輩はまず教室の中に無造作におかれている椅子に腰掛けた。続いて俺たちにも椅子に座るように促し、俺たち全員が座ると口を開いた。
「まず月城瞳。彼女は魔術を用いることの出来る獣化能力者、所謂『吸血鬼』ってやつね。生まれながらの吸血鬼で、ついこの間までは朧という男の下についていた」
先輩の発言を受けた月城さんの表情に僅かに浮かんだのは驚きと警戒だった。そのことは口調からも読みとることが出来る。
「よく知っているわね。響子か明に訊いたのかしら?」
月城さんのそんな言葉を、先輩は風に揺れる柳のように軽く受け流す。
「いいや違う。独自の情報網さ。疑うなら二人に訊いてみるといい。さて、お次は合気道部の後輩でもある狗井響子。狼の性質を持った獣化能力者。母方の家計からの隔世遺伝によって能力を取得。最初に力の片鱗に気がついたのは一四歳の頃」
「当たっていますよ。どうやって調べたのか、なんて野暮な質問ですね」
響子の言葉に対して先輩は、少し胡散臭い笑みを浮かべながら頷いた。そして、視線を俺の方へと移した。
「最後に賀上明。響子と同じく合気道部の後輩。ただの人間」
「やっぱりただの人間ですか」
「残念かい?」
「いえ、何となく安心しました」
まさかということもあり得ない状況なので、先輩にそう断言してもらえたことで安心することが出来た。
俺が一人そんなことを思っていると、月城さんが先輩に向けて少し強い口調で言った。
「それで? あなたがいろいろなことを知っているというのはよくわかった。でも肝心なことを何一つ言っていないわ。私たち三人をここに呼んだ理由、ソレを話してもらえるかしら? イヤだというなら実力行使も辞さないわよ」
今の瞳は苛立ちと殺気を隠そうとしていなかった。多分月城さんは、本当に実力行使をするつもりでいる。響子にもそのことが分かったのだろう。彼女は少し慌てたような口調で月城さんに話しかける。
「瞳、いくら何でも物騒なことは――」
だが上森先輩は響子の言葉を途中で遮った。
「隠すつもりはない。今から話すよ。私はね、君たち三人と友達になりたいと思っているんだ」
上森先輩の唐突な言葉に、響子は怪訝そうな声で応じた。
「先輩、いきなり何を言ってるんですか?」
「響子ちゃん、当然のリアクションをありがとう。さて、自覚してるだろうが再確認しておこう。現代の人間社会における私たちは、紛れもなく異端者(アウトサイダー)だ。そして君たちはほんの数日前まではお互いの命を狙いあう仲だった。だけど、言葉を通じて分かり合うことが出来た。そのことは事実じゃないかい? 瞳クン」
「そうね、否定はしないわ。それで? ここまでは前置きなんでしょ?」
月城さんの言葉に対して上森先輩は頷きながら言った。
「その通り、長い長い前置きだ。あの朧とかいう男は、吸血鬼こそが至高の存在だと考えていたようだが、私にとってそんなことはどうでもいいことだ。重要なのは私たちが、十と六年かそこらしか生きていないにも関わらず、異端者の烙印を押されて孤立しているというこの状況だ。だからこそ瞳クンは朧に従う以外の道を見いだせなくなってしまったし、狗井クンは狗井クンで随分と思い悩んでいた。もしかしたら取り返しのつかない悲劇を生んでいたかもしれないほどに」
……なるほど。上森先輩の言おうとしていることが何となく分かった。
「だから『友達になりたい』と?」
「そういうことだよ、賀上クン。異端者である私たちは互いを攻撃しあっている場合じゃない。吸血鬼や人狼である以前に、ただの高校生に過ぎないんだ。一人で出来ることなんて、あまりも限られている。だからこそ協力しあうべきだと思うんだ。そのために、まずは私たちみんなで友達になってみよう、という話さ」
上森先輩の言葉を受けた俺と響子は一度だけ顔を見合わせあった。
……上森先輩の言葉は、俺と響子にとっては今更確認しなきゃいけないことでもない、分かり切っていることだった。だけど……。
「な、何よ、二人とも」
「私も、多分明も、同じことを考えていると思うよ」
気取ったような言葉なんて必要ない。
確かに響子も、月城さんも、『普通』の枠から外れているかもしれない。だけど、普通の思いを抱いちゃいけないわけでも、抱かれちゃいけないわけでもない。
あまりにもシンプルな、子供っぽいとすら言えるような理屈で動いちゃいけない筈なんて無いんだ。
「私は、瞳と友達になりたいんだって、今改めて思ったんだよ」
「……何を今更言っているの? 私は、あなたや賀上君を、……殺そうとしたのよ?」
目を伏せながらそう言う月城さんに、それでも響子は真っ直ぐに言葉を向ける。
「それは私も同じだよ。だけど、今はここにいる。私は別に瞳のことを恨んだりなんてしてないんだよ」
少しの沈黙の後、伏せていた顔を上た月城さんは言った。
「……本当に貴女って、お節介で、自己中心的で、ワガママで、無神経で……、そんなだから、どうせ断ったって何度も言ってくるんでしょ? いいわよ、分かったわよ、なってあげようじゃない、……友達に」
「ありがとうね、瞳」
「ちょっと!? さわらないで、抱きつかないで、暑苦しい!」
「えー、いいじゃん、友達なんだし」
「貴女の友達の基準はどうなってるの!? 離れなさいよ、獣臭いのよ!」
「お、悪口にバリエーションが増えてきたね」
……そうだ。
俺はともかく、響子も、月城さんも、今ここにいる。
だから絶対に大丈夫だ。
この先何があってもどうにかなる。
ギャーギャードタバタしている二人の様子を見ていると……ついでに胡散臭そうな笑顔を浮かべる上森先輩を見ていると、ほとんど根拠も無しにそう思えた。
アウトサイダーズ タジ @tazi0910
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