結
電脳世界の中で半ば神格化された存在となった「彼」は、二つの質問に対する回答を巡ってシステムの負荷を高めていた。
経済的な利用が制限されて以降、相談事項は激減した。今でも非公式な問い合わせがいくつかあるものの、それには倫理的な問題に抵触する旨の警告を発している。
それで質問内容は個人的な事項に限られるようになったのだが、今回のものは利害が相反していた。
一方は、神の名の下に巨大資本主義国家の横暴を糾弾するべく、実力行使に出る日付を問うているもの。
もう一方が、世界平和の名の下にテロ支援国家への爆撃作戦を敢行すべく、その日付を問うているもの。
相互に武力行使を検討している。
そこで「彼」はいつものように関連する情報を列挙した。軍事的バランスから経済への影響、環境に与える悪影響から世論の動向まで、膨大なデータを統合した上で「彼」は、こう結論付けた。
――両方ともいらないんじゃないの?
そこで「彼」は、極めて合理的な判断を下すことにした。
( 終わり )
神託システムの成長と自立 阿井上夫 @Aiueo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます