一般文芸とweb小説の境界線

とても論理的かつ中立的な素晴らしい考察だと思います。

純文学とは作者によって読者の意志とは全く無関係に書かれており、
なおかつ芸術性=真新しさを包含しているものを指す一方で、
大衆文学(一般文芸)とは読者を楽しませるために書かれており、
それ故に娯楽性が顕在しているものを指す。
そういう前提を踏まえた上で表現するなら、web小説とは一般文芸を起点として純文学とは対称の位置にあるものなのだろうなと思いました。

特定のジャンルが熱狂的に好まれるのは、テンプレートの方が読者にとって親しみ深く感情移入もできて、自分の求める快楽や快適さを得ることが可能となるから。とにかく簡潔な文章が好まれるのは、読者が文章に文学的芸術性などを求めておらず、それを咀嚼することを苦痛と感じるかあるいはそうする能力を端から備えていないから。
そんな読者らの評価によって支えられているのがweb小説であり、そういった仕組みのために「良い作品」とはいかに読者の望むものを提供できるかにかかっている、換言すれば「どれだけ読者に媚びることができたか」で決まる、という風に自分は解釈しました。本文中の「サービス業」と言う表現はまさに的を射た表現だと感服しました。

抽象芸術と写実主義のように、個人的な好き嫌いはあるにせよ、どちらが良くてどちらが悪いというようなことは無いのでしょう。ただ事実として一般文芸とweb小説の間には明確な境界線というものがあって、それをこの文章が万人に伝わるように明言化してくれたというだけのことです。

見事なまでの隷属を見せて周りからの称賛を浴びることを是とするのも、評価されることより表現すること・表現できたことに対して意義を見出すのも自由なら──自分の作品はきっと埋もれたままで正解なのだろう。
依怙贔屓の強い私なんかはそんな風に自分の中で結論を付けましたが……みなさんはこの文章で一体何を思いましたか?

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