散文詩【苦痛を愛せなくなった時に読み直すための詩】

豊臣三毛

苦痛を愛せなくなった時に読み直すための詩


 私は苦しい

 今、

 悪夢によって、

 幻覚によって、

 暗鬱によって、

 そして、

 それ等を制御できない事によって

 私は痛い

 常、

 歩けば脚が、

 笑えば頬が、

 寝れば背が、

 つまり、

 生きてるだけで痛みに塗れている

 何故私は苦しい?

 何故私は痛い?

 知っている。

 分かっている。

 真っ当に生きていないからだ。

 労働をせず、

 勉学をせず、

 趣味を捨て、

 人々を嫌い、

 そして、

 「普通」に憧れるふりをして、

 「盆暗」を蔑んでいるからだ。

 その結果が此の様だ。

 虚無の中

 声が責め立て

 逃げ惑う

 正道嫌い

 今や化物

 然し人は逃げられない

 断じて苦痛は誤魔化せない

 人々も、

 畜生も、

 植物も、

 現世さえも、

 決して死からは逃げられない。

 己を甘やかしたその度合いに応じて、

 死はより強く、

 恐怖と絶望で殴りつけてくる

 その痛みも苦しみも、

 同じくより強くなる。

 お前は其れに耐えられるか?

 耐えられるだけ苦しんだか?

 未だ々だ足りぬ、そう言いきれる

 根拠は分かりきっている

 どれだけ苦しみ抜こうとも

 死の苦しみには至らぬが故

 どれだけ痛みを叫んでも

 死の痛みより矮小が故

 それでも人は自殺する

 死こそ救いと見たる時

 ならばとっとと死ねばいい

 また戸惑って、

 苦しむ前に

 それでも生きると言うなれば

 死ぬるが怖いと泣くなれば

 覚悟を決めろ

 子供でさえも知っている

 生きる事は苦しむ事だと

 生きる事は、痛む事だと

 もう後戻りは出来ない

 お前の脚を血塗れに染めて

 お前の身体を風雨に喰わせ

 せいぜい死から逃げる事だ

 肉体が挫ける、その時まで

 人は死ぬ

 生から降りる時に

 人は生きる

 死から逃げる為に

 時代が早過ぎたんだ

 苦しみの無い世界を求めるには

 生きろ

 苦しめ

 そして

 死ね

 今の時点での最善だ




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