第4話 エピローグ

未 来  あの…



       老女、未来の声に気付き振り向く



未 来  今日はありがとうございました。

     本当は、人の過去を関係の無い人間が見てはいけないんですよね

老 女  いいのよ。

     あなたの過去を呼び戻せるきっかけになって欲しくてね。

未 来  私、過去を呼び戻せますか?

老 女  大丈夫よ

未 来  ……ありがとうございます。

     私も、もう帰ります。

老 女  ええ、気を付けてね。

未 来  はい。



       未来、深々とお辞儀をして、ゆっくりとドアに向かう

       そしてドアノブを握った瞬間、老女に振り向き



未 来  お婆さん!本当は私、知ってるんです。

     私にはもう、過去が無いって。



           老女、驚いて未来を見る。



未 来  生きている人間には過去があるけど、死んだ人間には過去は無い。

     そうですよね…。それでも…待っていたくて……

老 女  そうだったの…

未 来  お婆さん、さようなら。そして、今日までありがとう



     晴れ晴れした泣き笑顔で未来はドアの向こうへと歩き出す。   

     未来の去ったドアを見詰め、老女は悲しそうに天を見上げる



老 女  あなたともう一度巡り合う為に、私はこうして此処に居る。

     こんなやるせない夜には、何故だかとてもあなたに会いたくなってしま     うわね。

     無理だって、わかっていることなのに…



                 音楽:(恋しこいしや/里アンナ)



老 女  あなた…あと何人の思い出を蘇らせて幸せにしたら、私達はもう一度

     巡りあえるのかしらね…



         幻影:老女の恋人が現われる

         恋人の「もうすぐだよ」の声に老女が嬉しくて手を伸ばすと

         幻影は跡形も無く消えてしまう。(老女にしか見えない)

         老女、小さく微笑むと



老 女  あと少し…そう、あと少しですね。



                 店内の柱時計が鳴る


                         

老 女  あら…もうこんな時間?

     そろそろ家に帰らなくちゃね。

     (胸の懐中時計に向かって)ねぇ、あなた。

     今夜は私達の思い出でも語りましょうか

     甘く悲しい私達の思い出を…



         老女、ゆっくりとした足取りでドアを開けて出て行く———


                                   完

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過去からの贈り物~夢のかけら~ 湖村史生 @Komura-1104

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