あの時俺の意識は地球の並行世界とか、なんかそういう所に飛ばされていたのかも知れない。

月夜 裏兎

最終話

 ――どこからか、声が聞こえた。


 世界を救えるのは、貴方あなたしか居ないのです!どうか、目を覚まして――


 ――目を開けると、王都おうとの中心の広場ひろばに立っていた。


 そして、目の前に――魔王まおう


「えぇぇぇぇぇぇぇぇーー!?」


 思わずさけごえを上げると、魔王がくるりとこちらを向いた。でけぇ。全長10メートルくらいか。


貴様きさま何者なにものだ?何しにここへ来た?」


 俺はその問いに答えることが出来なかった。どうやら記憶きおく大部分だいぶぶん欠落けつらくしているらしい。自分の名前すらも思い出せない。


「誰だろうと、我の侵略しんりゃく邪魔じゃまをする者はゆるさん!れい!」


 魔王の右腕みぎうでが俺の顔面がんめんに迫り、それが衝突しょうとつする瞬間しゅんかん


 ふいに、声が聞こえた。


「勇者様!これを使って!そいつを倒して!!」


 エルフを思い起こさせる容姿ようし彼女かのじょが持っていたのは、銀色の剣だった。光に反射はんしゃしてかがやく一本の剣は、魔王を倒すのに十分な切れ味を持っていると思われた。


「分かった!ありがとう!」


 俺に向けて放り投げられた長剣ちょうけんが、い付くように右手の中におさまった。すぐに顔の前で振り上げ、魔王のうでたたき落とす。


「グワアアアァァァッ!」


 奴は腕を押さえてうずくまる。俺は、そのすきのがさず――


「うおおおおぉぉぉっ!!」


 ひるがえした剣を水平に構え、魔王の心臓しんぞう目掛けて光る剣先をき出し――






 そこで、目が覚めた。


 外で聞こえるのは、自動車じどうしゃの通る音と、鳥の鳴き声のみ。




 ―――ゆめかよ!!!




 俺はその日、その夢のことを忘れないようにメモにしるし、カクヨムに小説として投稿とうこうしようと決意けついした。


 ――ノンフィクションの異世界ファンタジー短編小説たんぺんしょうせつとして。


 次の日、その後ちゃんと魔王が倒せたのか気になって、わくわくしながら眠りに落ちたが、その夢を見ることはなかった。

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あの時俺の意識は地球の並行世界とか、なんかそういう所に飛ばされていたのかも知れない。 月夜 裏兎 @Ritto

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