はじまりの出会い③
とある講義棟脇に設置された掲示板。
癖毛の青年は貼り付けたばかりのチラシをよそに、こめかみを揉んで空を仰ぐ。
(恨むぞ、所長。)
癖毛の青年、月代夜行が所属するRGCのバイト募集チラシである。
(無いわ~。)
募集要項自体は、まともであろう。
編集専用ソフトで作成され、フォントやレイアウトもセンス良く仕上がっている。
だが、背景のイラストがイケテナイ。というか、狂っている。
(白目剥いた落ち武者?幼稚園児?が『アットホームな職場です』って理解不能な職場まっしぐらだろ。)
周りに3つほど立っている落ち武者?は人類なのか動物なのか性別すらもわからない。
作画も間違いなく、我がRGAの所長様だ。
・・・・・・後で説教だな。吐息が空気に溶ける。
(とっとと《けっこん》『血痕』を付けて僕もあのレストランに行こう。ランチメニューで候補は絞ってあるし、アラビックコーヒーの風味に浸って、コーヒーに合って人気の練り菓子も堪能してやる。)
伊達メガネを着用してほんのひと時を待つ。するとようやく慌ただしく近づく2人分の足音を捉える。
(面倒臭い。それにまだ、この仕事に集中できてもいない。でも・・・・・・。)
『――あんな哭き顔した人、放っておける訳ないだろ。』
記憶にまだ新しい音声が再生される。
浮かぶは、瞳を焦がしてねめつける傷だらけの一人の少年。
『――あんたの、憎しみも、怒りも、全部何もかもみんな吐き出させてやる!あんたの、いつも近くにいる人達の、百万分の一も、大したことないだろうけど!
今、ここにいる俺が!代わりに【どうせ】を全部ぶち壊してやる!
もっと、全力全開でかかってこいよ!この大馬鹿野郎!』
(――放っておけないもんな。)
特別になったあの日が浮かんだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あたしは逃げるように三子の手を引いてきた。慌てて、すぐ手を離す。
「みっちゃん、ごめんね。あたしが変なことしたせいで!」
両手を重ねて拝む真央。
「いえいえ、お気になさらず。」
ひらひらと手を振って軽やかな笑顔で三子が流す。
気が済まなかったあたしは次の授業のある講義棟に着くまで、言葉を変え品を変え謝り続けた。気持ち良く許してくれた三子には感謝しかない。後でお返しをしよう。つまらないものですが、高級チョコレートでも贈ればいいかな?
入口に差し掛かったその時、
「お急ぎのところ申し訳ございません。少しいいですか。」
男の人に声をかけられた。
「校内で、ここ以外にある掲示板までの行き方を教えてもらえませんか?」
ハンカチの花が風にそよぐ中、癖毛黒髪の青年が現れた。
祓魔警備はじめました❗ 第1譚 『月照らす日だまりの唄~はじまり~』 @Jam0130
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。祓魔警備はじめました❗ 第1譚 『月照らす日だまりの唄~はじまり~』の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます