第5話  ニートは大人になりたかった

数日間、鬱がフラッシュバックして寝付いていた。

誰よりもまじめに頑張って生きてきたのに、

どうしてこうもつらいことばかりなのだろうか。

悩んで、寝付けずにアダルトサイトをみつめて

興奮もしていないのに行為の様子を眺めていた。


昨夜、親と話し合う機会があった。

自分はどこかニュースや世間の関心、

社会的な変動や迫りくる未来を予想することが

立派な大人がするべきことだと

どこか凝り固まって考えていた。

何か政治的に関与できるわけでもないけれど、

思想や指導者意識なんかも持ち合わせてないけど

漠然とした不安を具体的にしていくことで

自分の責任を明らかにする

それが大人のすることだと気を張りすぎていた。


けれど、母親に諭された。

「貴方の考える大人は、きっとどこにもいない。

 みんな肉体以外はこどものままよ。

 無理におとなになろうと焦らなくていいのよ。」


それを聞いて、腑に落ちた

ああ、私は幼少期から早くおとなになろうとしていたんだと

そして、もっと子どもらしい青春を送ればよかったと

砂時計のように時間をおいて気持ちが積もってきている


恋愛も、夜遊びも、恥ずかしながらしたことがない

人との距離が近くなればなるほど

人と比較してストレスを感じてしまう性格だ。

自身の繊細さを言い訳にしたくはないが、

エゴに走りすぎて享楽に身を投じる人間にはなりたくない。


自分という王国を成立させるために

躍起に責任者もすべて自分と考えて

閉塞感と緊張感の中で、国を維持していた。

けれど親の言葉でその肩の荷が下りた

自分は王様でもなく、民衆でいいんだと感じた。


だから過度に誰とか関わるわけでもなく、

幸福や不幸を主張しては他人を傷つけないように

共感しても同情はしない程度の人間性を保って

傷つくことをおそれて自閉的になる自分を捨てずに

私は子どもでいようと思う。


理屈っぽいし、わけがわからないよな

自分の中では前向きな気づきなんだが、

文字に起こして振り返ると卑屈だ。


まじめが祟って不適合

まあ、いまはなんだか居心地がいい。

エリートには縁がなかっただけさ

庶民らしく気楽に構えてみよう。

おとなになる必要なんてないんだから


今日はそのくらいかな

おやすみなさい。

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