抱き締めたくて…

彗星

あなたを忘れられない…


大学最後の夏、私は東京の渋谷に来ていた。

石川県の田舎の方から出て来た私は人の多さにびっくりしていた。

人の多さにびっくりしながらも少し五月蝿さを感じつつ、イヤホンをして一番お気に入りの曲を聴き、軽く口ずさみながら目的の場所に歩く。

今回の目的は去年いなくなった彼を訪ねて…



彼は私の幼馴染で一個上の男の子、一緒にいる時間が多かったのもあり恋人では無かったけどそんな感じだった。

よく喧嘩もしたり、泣かされたり、遊びに行ったり、その関係が私は楽しかった。

ある日突然彼からさよならの一言だけメールが送られて来た。

私は最初は意味が解らずシカトしていたけど数日後、親から彼が東京に引っ越したと聞かされ私は後悔した。

電話しようとしても解約したのか繋がらずにいた。

あの時何でシカトしたのか、すぐ電話して止めれば良かったなんて後々思っても無駄でしかなく、いろいろ考えると彼のことが好きだったんだなと自覚して涙を流した。

親が彼から預かったと言って手紙を渡して来た、内容を読むと今までの思い出、笑い話、何故引っ越すのかと最後に、好きだったよ、と涙の後だろう少し濡れてくしゃくしゃになってる部分を見て、私は自室にこもりまた泣いた。

泣いてる最中も彼との思い出で頭の中はぐちゃぐちゃだった。


次の日、一週間、一ヶ月、半年と時間は少しづつ過ぎていった。

夜になると自室の窓から空を見上げてたまに彼の事を考える。

彼と二人でよく聴いていたお気に入りの歌を聴きながら…

もう愛されることも必要とされることもないのかな?

一人ぼっちで、あなたに伝えたい言葉も宙を舞い、届かないと分かっていても叶わない願いごとを夜空にむけてしてしまう。

彼とは何度か恋人感覚で手を繋いだりした事もある。

ギュッと握られた私の手、彼の暖かくて優しい手に照れながらも離さないで欲しいと願ってしまった自分もいた。

小さい頃から彼とはたまに喧嘩をしていた、彼はいつも私を怒らせ最後には私を泣かしてくる、少しするとすぐごめんって謝って後ろから抱き締めてくれたよね…なんだかんだ優しいなと思いつつ少し嬉しかった。

ずっと前から、彼がいた頃から好きだったんだなと改めて思い、もう会えないと思うと胸が苦しくなった。

また隣で笑っていたい、ギュッと抱き締めたい、好きだと言いたい、あなたとの思い出が、温もりが消える前に…

そんな事を頭の中で考えながら今日も夜空にむけて願う。

歌が終わる頃、夜空に流れ星が一つだけ流れた…


彼がいなくなって次の春が来た頃、彼の親から手紙が来た、彼が今どうしてるのかと、東京での様子、仕事場や連絡先、最後に今も私と会いたがっていると書いており私は嬉しくなった、ただ少し怖くもなった。

最後にちゃんと別れも伝えられず、実際会った時になんて言われるかなど考えると怖くて会いに行けない日々が続いた、ただ時間が経つにつれ会いたい気持ちが強くなり会いに行くことに決めた…




なんだかんだ曲を聴きあの時の思い出を振り返ってると彼との待ち合わせ場所に着いた、あの後少し時間が経ってしまったが彼にメールを送り会いたいと伝えると喜んで了承してくれて今日会うことになったのである。

緊張をしながらも何とか平常心を保とうとお気に入りの曲を聴いて待っていると後ろからイヤホンを少し引っ張られ、そちらを見ると少し大人びた彼、でも少しイヤホンを引っ張られた事にイラついて彼を怒ると、喧嘩になってしまい泣きそうになる私、そんな私を見て少し笑った後抱き寄せてくれた彼に私は照れながらも抱き返した。

(今度は離れないでね!あなたが大好き!)

私がそう言うと、

(離さないよ、これからもずっと…)

そう言うと彼は照れくさそうに私をギュッと抱きよせてキスをした。

彼との間で音量が大きかったのか二人の想い出の曲がイヤホンから流れている。



『Departures~あなたにおくるアイのうた~』



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抱き締めたくて… 彗星 @Marlbmro

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