無敵要塞
謡義太郎
赤いボタンとシミ
その男はたった一人、空中要塞で戦場へ赴いた。
相手は連合軍。要塞といえど、たった一基で立ち向かえるとは到底思えなかった。
不安な国民に対し、彼は通信で演説を行った。
「戦力とは攻撃力と防衛力に分けられる。攻撃力とは単位時間当たりの殺傷可能人数である。防衛力とは防御可能面積である。我が国には戦力といえばこの空中要塞一基のみである。
だからといって、攻撃力が連合軍に劣るわけでも、防衛可能面積が国土に満たないわけでもない。
連合軍を圧倒し、我が国土を防衛しきるだけの武力がこの要塞にはある。
国境の外で迎え撃つのは、連合軍を国土に一歩たりとも踏み入れさせないためである。
相手の数を見れば信じられないというものもいることだろう。
だが、我が要塞とその戦術は無敵である。
ここにそれを証明しよう。
この要塞は音速どころか、光速に近い速度を出すことが出来る。勿論細かい動きは出来はしないが、予めプログラムすることで、敵の感知外のスピードで攻撃が可能なのだ。
そして、その性能を活かした戦術がある。
それは、戦術的撤退である。
敵と開戦する瞬間に光速に近いスピードで撤退。地球を一気に一周して敵の背後から攻撃するのだ。
敵は目の前にいるはずの要塞に、背後から攻撃されることになる。
国民よ、安心して観ているがいい」
そして戦端は開かれた。
男は迷わず赤いボタンを押した。
予めプログラムされた軌道にのって、要塞は地球を一周。
だが、要塞はスピードを出せても、慣性の法則を克服しているわけではなかった。
男はボタンを押した瞬間に赤いシミと化した。
要塞も無事ではなかったが、その巨大さゆえか、推進力は無事であった。
そして連合軍の背後に到着……というより着弾。
衝撃波を伴い、連合軍全体を巻き込んで爆散した。
衝撃波は国境を越え、国土の半分を吹き飛ばした。
連合軍の全滅により、開戦とほぼ同時に終結したのだった。
無敵要塞 謡義太郎 @fu_joe
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