第17話蓮(回想)

妹の琴子と喧嘩した。

おれは、悪くない。

琴子がよそ見していたから……

だから、おもちゃが壊れたんだ。

けどその時おれは、こんな長く喧嘩することになるなんて思ってなかった。

双子、だけど、おれは兄だ。

だから、妹を守ってやらなきゃならない。

母さんと父さんと、約束した。

男だし。

意地張ってる場合じゃない。

今回は…家に帰ったら、謝ろう。

そう考えていると、親友の圭が顔を覗き込む。

「蓮、大丈夫?なにか悩んでるの?」

「ん…うん。琴子と喧嘩してさ。今日でもう何日経ったんだろ?琴子と話してないんだ。」

「珍しいね、そんなに大喧嘩したの?」

「うーん、まあな。仲直りしなきゃ。帰ったら、謝るよ。今日は遊んでるみたいだしな。」

おれは窓から外で遊ぶ琴子をみて言う。

「いいね、俺も兄妹がほしいよ。…俺、ちょっと図書室に本を返さなきゃいけないから、先に帰っててくれないか?」

「わかった。じゃあ先に歩いてるな。」

おれは圭と別れて、歩き慣れた道を行く。

空は曇ってる。そろそろ雨が降りそうだ。

しばらく歩くと川沿いの道に出る。

まだ圭が来るまで時間がある。ゆっくり、川を眺めて歩く。すると、川のすぐそばに、可愛い花を見つけた。琴子が好きそうな、薄ピンクの可愛い花。

あれを渡して謝ろうか。おもちゃ壊れちゃったしな。

おれは花に近寄って、少し眺める。

おれが見ても、可愛いと思える花。

喜ぶはず。

花を摘む。すると、急に背中を誰かに押された。

「!?」

おれは川に落ちた。今日は風も強いからか、流れがはやい。押した人も何もわからないまま、ただ流される。

く、くるし…………

こんな事になるなら、ちゃんと泳ぎを練習したらよかった。

目を閉じる。

いつも心配性で、優しい母さんと、無口だけど、やっぱり優しくてカッコいい父さんと、天使のように微笑む、大好きな妹が浮かぶ。

意識が遠のいていく。

おれ、死んじゃうのか?

琴子はずっと怒ってるのかな、仲直り、できてないし…おれが死んじゃったら、悲しいかな?だれが、琴子を守るのかな?

そういえば、圭とも帰るって約束したのに、川に落っこちちゃったし……

ごめんなさい、みんな。

きっと、今まで少し琴子にいじわるしたり、家でイタズラしたりしたバチが当たったんだな。

これからは、いい子にするから。優しくなるから。

もうちょっと、父さんと、母さんと、琴子と…みんなの…そばに…いたい…。

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Ivy イチバンボシ @bety10969

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