第8話 銀魂(実写映画)

いよいよ最終回である。ここまで読んでくれた皆様。並びに当エッセイが参加している「Re:バラエティ」を企画してくださった判家悠久さん(更新頻度がまばらで本当に申し訳ありませんでした)。本当にありがとうございました。お陰様で楽しい映画エッセイが書けました。


さて、最終回にふさわしいかどうかは謎だが最近観た映画がこれだったもんで仕方ない。だがある意味では今の時代を象徴してる映画と言っていいし、きっと需要もあるだろうということでこちらを書かせていただく。



「銀魂(実写版)」



◆銀魂(実写版)

◆2017年 ワーナーブラザーズ配給

◆福田雄一 監督

◆空知英秋 原作

◆集英社 週刊少年ジャンプ

◆主演 小栗旬 菅田将暉 橋本環奈

◆ジャンル コメディ




まあなんというか、原作については言わずもがな、である。今さらここの説明をするのもかったるい。だが万が一、万万が一知らない人の為に銀魂のかなり簡単な説明。


◆パロディ、下ネタ、時事ネタ、なんでもアリのギャグ漫画

◆ジャンプお約束のシリアスバトル編もあり

◆各キャラも人気が高く男女共にウケが良い

◆SF要素の入った時代劇


以上。



10年以上連載が続く人気漫画だが、実写化したのはおそらく昨今のブームに乗っかっただけでこの作品が特別実写化に向いていたとは到底思えない。むしろ向いてない。


その理由を挙げれば限りないが、まず個性豊かな宇宙人がモブとして多く出てくる。スターウォーズ並みに種類がいるので原作の雰囲気を出すにはここに力を入れておきたいところだがいかんせん主要人物は全員地球人なので、モブにそこまで予算は割けられない。よって、宇宙人(天人という)は全てコントのキャラクターみたいな安っぽい物となる。それが故に、始まって直ぐに感じる映画の雰囲気はいさかかチープなものだ。


ネタがきわど過ぎるというのも実写に向いてない理由のひとつだ。漫画だから出来ること、笑えること。アニメだから出来ること笑えること。そういうギャグが銀魂の魅力なのだが、これが実写になると笑えないネタもあるし、いかんせん俳優のイメージ等もあるのでなかなか踏み切れない部分もある。


もちろん、主演の小栗旬や橋本環奈はかなり好演していたが同じく主演の菅田将暉はイマイチ振り切れていない印象を受けた。菅田将暉自身、今は売れっ子で大事な時期だからだろうか。観ていて「まあこれは菅田将暉じゃなくても良いかな」と思ってしまった。ビジュアルの再現率は一番高かったが、人気イケメン俳優のイメージが先行してしまい志村新八というキャラクターにイマイチハマっていなかった気がした。反対に橋本環奈はアイドルという立場を顧みず、かなり挑戦をしていたと思う。自身でも言っていたがかなりのキャラクターへの愛が感じられた。


出演の俳優陣で言うなら、福田監督お気に入りの佐藤二朗、ムロツヨシは相変わらずのクオリティで映画を盛り上げていた。しかしこれも悪い意味で両名の俳優としてのキャラクターが立ちすぎてしまい佐藤二朗は佐藤二朗でしかなく、ムロツヨシはムロツヨシでしかないものになっていた。面白いのだが、これでは漫画を実写化する意味はあまりない。脇で輝いていたのは意外にも中村勘九郎だった。彼も格式高い歌舞伎役者という立場を覆し、なかなか体当たりな演技をしていた。好演であると言わざるを得ない。


内容としては至って原作に忠実かつリスペクトの感じられる物となっていた。だがいかんせんギャグ漫画であるがゆえ、同じくジャンプコミック出身の「るろうに剣心」の実写を超えるものとはお世辞にも言い難かった。あのノリを二回三回と重ねられると、いささかキツい。


直球な感想としては、映画として単独で観るなら物足りない。原作ありきで観れば、そこそこに楽しめる。そんな感じだ。



一体いつまでこの漫画原作の実写化ブームは続くのか。ジョジョに東京グール。BLEACHや鋼の錬金術。私たちが知らないだけで、この後も続々と控えているのではないだろうか。だとしたら恐ろしい。


いつまでも漫画やアニメに頼らず、しっかりとした映画を作って欲しい。それとも映画界は、もう磨耗してし擦り切れてしまったのか。もう名作と呼ばれる日本映画は観れないのか。私は大変不安である。


いつかまた、面白い作品たちが銀幕にかかる様になったその時は皆さんへかなり偏りがちのこのエッセイを再びお届けしようと思っている。その時まで、しばしのお別れだ。


それでは。


さよなら、さよなら、さよなら。



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偏食男の映画エッセイ 三文士 @mibumi

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