スナネコのはなし

@dicecounter

第1話

サンドスターを受けた動物達は人間のような姿になり、動物だった時の特徴を受け継ぐという。

熱しやすく冷めやすい性格のフレンズ…スナネコもその一人である。

暑さから逃れる為に洞穴で一人暮らす。楽しい事がないか、散歩し興味があれば言葉通り飛んで行くのである悩みは基本的にない。楽しい事を探し続けているから。

「ふー…」

砂漠を見渡せる高い場所から周りを見回すスナネコ。先ほどフレンズ達と話をしていた事を頭で考えながら。


「旅をしてみろ?」

少し驚いた顔をしたのはスナネコ。

「そうだ。お前このままじゃ退屈でおかしくなっちまうんじゃねーの?」

彼女に話しかけるのはツチノコ。

「色々旅すれば楽しい事たくさんあるだろう。砂漠でいつまでもいるのはアリジゴクぐらいだ」

「旅…おもしろそう!」

スナネコはグッと立ち上がると両手を握りしめる。その目は生気が籠っていた。

「でも……生活するの面倒だなぁ…」

彼女は肩をガックリ落とし椅子に座った。

「楽しいのも!大変な事もするのが旅なんだよお!ここらへんじゃ会えないフレンズ山ほどいるんだぞ!思い出話作って聞かせてみろよ!」

「おおー!それは楽しそう!」

再びスナネコは立ち上がる。

「でも…期待するほどでもないか…」

「ほら、かばんとかサーバルとか会ったんだろ?あいつら楽しそうだったろ。仲間連れて一緒にジャパリまん食べたらそれは絶品だろ?」

「それ凄い興味ある!」

再びスナネコは体を起こす。

「でも…騒ぐほどでもないか…」

スナネコが三度椅子に座る様子に、ツチノコは机を叩き言った。

「…………なんなんダヨお前はぁ‼︎」

今度はツチノコが立ち上がった。

「何をしても始めはすれどすぐに止めちまう!あっちにフラフラこっちにフラフラ、そういうの図書館で読んだゾ、「ゆーじゅーふだん」て言うんだ!そんなんだから友達がロクに出来ねぇんだよ!この前だってジャパリパーク中のフレンズ達で集まってる時もお前一人だったろ!」

ツチノコの熱の入った説教に対し、スナネコは反応が薄い。

「いや、ボク一人で生きて来たし気にするほどでもないかな…」

「……ンアアアアアア‼︎オマエハァ!

サーバル達が行ってからオレと会ってから何したと思うゥ⁉︎「なんか楽しいコトなーい?」って毎日毎日聞いてきたろ‼︎

そこまで言うなら仕方ないと教えてやったらだよ、オマエ最初こそハマれどチーターもびっくりの速度で飽きるじゃねえか‼︎紹介したオレの身にもナレってんだ‼︎」

ツチノコは地団駄を踏みさらに言った。

「だから、お前は一旦ここを離れろ。その性格が治るまでな!」

「えー…こういうのって治らないって」

「へーいジャパリバス2号‼︎」

ツチノコはスナネコの言葉を遮り指をパチンと鳴らす。

そこにはエンジンを吹かしながらジャパリバスが走ってきた。カラーは緑色を基調としておりかばん達のバスとは違っていた。

「やあやあ」

大人びた声で運転席を降りたのは、黒髪を揺らすフレンズ。

「君が話に聞いていたスナネコ君かな?私の名前は、タイリクオオカミ」

「はい、スナネコです………

わーバスだーっ」

スナネコは挨拶をするとすぐに興味をジャパリバスに移し飛び乗ってしまう。

「中も綺麗だしベッドや色々な道具がある…。でも……別にいいk」

スナネコがいつものように冷めかけた、その時である。

「危ないよ子猫ちゃん‼︎出発進行‼︎」

「えっ」

タイリクオオカミはエンジンをブォンと吹かす。キャッと声を上げ座り込むスナネコ。

バス内にいることを確認するとタイリクオオカミはタイヤをキュッと鳴らし車を走らせた。手のサインをツチノコへ送りながら。

「強引なのはモチロン。だけどな、簡単に飽きない生活が待ってるゾ」

ツチノコは、遺跡に戻るとジャパリコイン探しを始めるのだった。



ジャパリバスを走らせて1時間程経ったろうか。スナネコが不思議そうな顔で言った。

「あの…なぜ私を乗せるんですか?それにどこへ行くんですか?」

「ええとね」

タイリクオオカミは顎に手を当てると言った。

「レースだな。このバスで走りやすい道があってね、そこでバスを使った追いかけっこをするのさ」

言った瞬間に小石を拾い右にバスは車体を揺らす。

「誰にも追いつけない速さがそこにあるっ」

今度は木枝を踏み車体が小さくジャンプ。小さいと言えど体にはドスンと衝撃が走る。

「……凄いよこれ。体にぐっと重さがかかって面白い。迫力もある!」

「これはいい漫画のネタになりそうだ」

「うん…」

スナネコの反応を見て「話通りだな」と呟くとタイリクオオカミはさらに言った。

「今度、セルリアンハンターのキンシコウ達にインタビューをしようと思うんだ。これも漫画のネタでね、弱かった主人公が仲間と共に一流のハンターになるって話を作るんだ」

「おおおっそれ面白そう!爪や牙を立てて大暴れだね!」

「そう!インタビューでリアリティを出そうと思うんだ」

「ふぅん…」

「…」


村に止まり、バスの電池を充電している間、二人は木陰で休憩をとっていた。右手にジャパリまんと左手には水の入ったコップを持ちながら。

「スナネコ君」

タイリクオオカミは言った。

「僕と君は似ているんだ」

「ええっ?」

スナネコの反応を見ると話を続けた。

「興味があるものには、すぐ向かっていくことさ。行動は違えどね」

「おおーぶんせきじょうずー」

「ありがとう。では私達の違いはどこにあるのか。

それはその興味はどこにあるという事だ。私は相手の顔を見るのが好きだ。驚いたり笑ったり色々な表情が漫画を描かせてくれる。たくさんの経験をしたい。それもまた漫画を描かせるからね。ロッジでキリンやアリツカゲラ達と過ごした夜はスリリングだった………」

話の途中でスナネコの表情をしっかり見ている。


「聞いているから話してよ」

それはタイリクオオカミにとって予想外の反応だった。

「…話すと長くなるんだが、すぐにそれだけを見て満足しないで、もう少し中を見てはどうかって事だ。さらに深い事を知れば楽しくなるだろうな、って」

「………難しいや」

スナネコの反応を見てオオカミは笑った。

「それは良かった」

「何で?」

「秘密っ」


二週間後、オオカミに依頼が来た。

「すみません、私達のライブの為に長い距離走ってもらうなんて…」

「いえいえ、礼には及びません。私だって貴方達のファンですから」

ジャパリバスにはスナネコだけでなく、ペンギン…プリンセス・コウテイ・ジェーン・イワビー・フルル達に、

「いやー、助かりましたよ!これでPPPの遠征ライブが出来るってもんですよ!」

マネージャーのマーゲイがいた。

「みなさんがPPPですね!」

声を発したのはスナネコ。

「こんな近くで見たのは初めて〜」

嬉しそうに彼女達を見つめていく。

「でも……」

聞いているオオカミはゴクリと唾を飲み込んだ。

「近くで見ると、とっても可愛い!お話してもいいかなぁ?」

「「もちろん‼︎」」

PPPの元気ある返事を聞いてオオカミはそっと胸を撫で下ろし呟いた。

「次のライブ会場までは半日はかかるだろうが、きっと飽きることはないだろう」



おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スナネコのはなし @dicecounter

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ