異世界きたけど、無一文だから世界は救わないです。
怪盗ぽこた
第1話 縛りプレイ好きです。
「………ん」
「朝か…。」
「だる…だる…」
rrrrrrrrrrrrrrr…
rrrrrrrrr…
スマホを手に取り画面を眺める。
バイト先から電話がかかってきてる。
わかってる、遅刻しているから電話がなるんだよな。
でも、みんなだって仕事やバイトに行きたくない時があるよな?あるよ。うん、ある。
そんな弱い自分を全面擁護しつつ今日も、バイトをバックレた。
ちなみに3日目。
しつこ過ぎない?どんだけ人手不足なんだよ!バイトに期待しすぎなんだよ!
「太郎ー!太郎ー!」
母さんの声だ。気が重い。
「もう!バイト辞めるのはいいけど、ちゃんとまた働いてよね!」
「生きてるだけで、お金はかかるのよ!」
クズな息子に浴びせるテンプレセリフをありがとうございます。
「ねぇ?聞いてるの?いつまでも甘えないでちゃんとして!」
「わかってるよ!今日は面接に行くよ!!」
バンッと扉を開けて入ってくるオレの母親。ノックしてください。お願いします。
「なら早くご飯食べなさい!!」
そういうと母さんは出て行った。
オレは、田中山太郎。25歳、無職。
RPGゲームをやり倒しては朝起きれなくなりその度にバイトを辞めている。ちなみに、就職した事はない。
はぁ…バイト探すか。布団にもぐりスマホをイジる。とりあえずログインボーナスっと。
「…何故働くのですか?」
「何故って、そりゃ生きるのにはお金がかかるからね。」
「生きるために何故お金が必要なのですか?」
「ご飯食べたり、服買ったり物を買うのに必要なんだよ。」
「では何故、生きていたいのに働かないのですか?」
「仕事が好きじゃないから。」
「何が好きなのですか?」
「RPGみたいに、モンスター討伐したり、お宝探したり、冒険してお金が稼げたら一番いいけどね」
25歳にもなって、ファンタジー夢見てる痛いやつだと思うなよ。男の子はみんなそういう所あるんだよ。
…ん?
……んん?
てか今誰と話してたんだ?
……やばい、やばいやばいやばい。めっちゃ怖い。ストーカー?ストーカー??
「それでは行きましょう!」
やばすぎる!どのタイミングで??どのタイミングから??
「誰だよ!」
がばっと勢い良く布団から飛び出したその瞬間。強い光に目を瞑った。ガヤガヤと人が行き交う音がする。ゆっくりと目を開けるとおれは人々が行き交う大通りにいた。
「へ?」
石造りの家、見た事のない果物。現代では有りえない武器屋。亜人種、エルフ。
「まじ?」
本当に異世界?にきてしまった…。てことはオレは勇者的な扱いって事?
「…太郎…様…」
何処からか声が聞こえる。
「太郎様!あなたにぴったりの世界はいかがですか?あなたの好きが詰め込まれた世界で楽しい人生を送ってくださいね!」
…異世界生活。悪くない。
じゃあ、武器やら魔法やら使えるのか?特別な能力が?勇者の性能はチート級だからな。
神様、オレのパラメーターはチート級なのか?
「あなたの好きが詰め込まれた世界ですから!もちろんジョブは最初期の村人!転職出来るのは基本ジョブのみ!魔法はテレポートだけしか覚えませんよ!」
「好きもなにもひどすぎません?」
いやいや、無理ですよ。オレの好きが詰め込まれてなくない?おかしくない?
世界救えなくない?
「?」
「だって好きですよね?縛りプレイ♪」
異世界きたけど、無一文だから世界は救わないです。 怪盗ぽこた @pOkota
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