すなねこ

れべる8

ともだち

 きらきらと、光っていた。

 なんだろう、と思った。


 一匹の小さな子猫は見た事も無い、物珍しいそれに興味を抑えられなかった。

 落ちてくる光にゆっくりと歩みよる。暗闇の中、自分の元へ近づいてくる光は徐々に強く、大きくなって――――


 ……お?

 …体が重い。起き上がろうにも妙な違和感が四肢の動きを鈍らせる。

 やっと安定した体制を見つけると、いつもより地面が遠くに見える。ぼんやりとした頭を巡らせ、違和感の理由を探す…と


「おや」


 近くにいた白い彼女と目が合った。

「スナネコかな。今は凶暴なセルリアンが多いから、隠れた方が良い」

「……」

「こんな明るい内にみかけるのは珍しいけど、どうかした…って、聞いているのかい!?」


 ――彼女は、アラビアオリックスは現状を察して、『フレンズ』というものを教えてくれた(よく聞いてなかったけど)。それだけだった。


 忙しそうにしていたので言及は避けた。あぁ、そうなのか、と。興味も熱を失っていた。


 この姿になってから、色々なものを見た。花のついたサボテン、少しだけ近づいた空、青い物体、包まれた食べ物、そして――


 家族を、失った。彼らは僕を拒んだ。この姿を受け入れてくれなかった。すみかは、僕だけのものになった。その日、からっぽの家を見た。


 この頃からだろう。僕は繋がりが絶たれる事を何よりも恐れた。

 サボテンも、空も、ボスも、食べ物も、いつかは失ってしまう。消えてしまう。

 繋がっていればいるほど、失う物は多くなってしまう。つらく、なってしまう。

 ならばあまり関わらず、興味を持たず、繋がりを持たずに生きよう。

 知らなければ良い。そうすれば、例え失ってしまっても平気でいられる。悲しまずに済む。

  

  すぐに、忘れてしまえばいいんだ。


 そう、思ってたんだけどなぁ。

「えー!もうちょいノってよ!!」

 彼女たちは違った。どうしても、忘れることができなかった。…いや、忘れたくなかったんだ。

 ボスが「冷めやすい」と言っていたけど、あれは間違いだ。なぜなら、彼女たちといると胸があたたかくなるから。

 初めての事じゃなかった。家族と一緒にいたときも感じた、あのあたたかさ。

 また失ってしまうかもしれない恐怖は、すっかりまた遊びたい思いへと変わっていた。

 あのばか正直な猫は、きっと誰の手も離さない。あのやさしい子は、きっとどんな事も受け入れてくれる。


 そう、思えた。どんなに苦しくても、つらくても、どれだけの敵を作ろうとも。きっと…いや、必ず味方でいてくれる。だから。つまりは…これからも、どうかよろしくね。

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すなねこ れべる8 @revel8

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