ともだち

本羽すうぷ

ともだち

 ともだちってなんでしょうか。知り合いよりはもっと親しいものだとは思うのですが。

 博士さんと助手さんみたいにいつも一緒にいるのは間違いなくともだちだと思う。じゃあどこからがともだちなんだろう?一緒にジャパリまんを食べたら?ううん、たまたま食事を共にしたことはあっても、それきりで会ってないフレンズさんもいる。それはともだちとは言えない気がする。いつも会っていたら?ひと言くらい声をかけて通り過ぎちゃうのはともだちじゃないような。少なくとも分かることは…わたしにはともだちと自信をもって言えるフレンズさんがいないということ。



「アードウルフちゃん、やっほー…ってそろそろおやすみかな?」

「あ…はい、もう少し歩いたら休もうかなって…」

 たまたま出くわしたトムソンガゼルさんと何気ない会話を少し交わし、わたしはいつも変わらず行っているさばんなちほーの散歩の終わりにボスさんのところに向かう。次の日に食べるジャパリまんを取りに行くために。

 散歩の途中で誰かに会うといつも考えてしまう。

 あの子は、ともだち?

 いや、きっと知り合い。ひと言で通り過ぎることはないけれど、ともだちとまでは言えない気がする。それにあの子にも、ともだちとは思ってもらえてないかな…。考えているうちにボスさんのところに着いてしまった。いつもの通りジャパリまんの包みを2つ取り、ボスさんに声をかける。

「ボスさん、いつもありがとうございます。これ、いただいていきますね」

 ボスさんはいつも話してはくれないけど、みんなのためにジャパリまんを持って待ってくれている。それを考えると思わずお礼が口をついて出てしまう。前に他のフレンズさんに見られたときは笑われたこともあったけどね。

 ボスさんはともだち…ではないでしょうね。一度もお話できたことないし、そもそもボスさんはフレンズさんではなさそうなので。ジャパリパークのいろいろなところでがんばってると聞くのでとても尊敬はしているけど。

 散歩からナワバリに戻るころにはもうだいぶ眠気が迫ってきていたのでわたしはすぐ横になった。

「わたしにも、ともだち…いつかできるかな。また起きたら…さんぽしてフレンズさんとお話しようっと…」

 ぼんやりとしながら誰に話しかけるわけでもなく、ひとりでに声に出ていた。



 とつぜんとても大きな音がしてわたしは目がさめた。はっとして起きあがるとどうやら山からサンドスターが吹き出しているようでキラキラしたものが山からあふれている。

「きれい…」

 山からサンドスターが吹き出すのを見るのは初めてではない。でもなぜかいつも見とれてしまう。また新しいフレンズさんが生まれるのかな。ともだちになれたらいいな…。

「やあ、アードウルフも起きてたんだ。またすごいサンドスターだね」

 声がした方を見るとブチハイエナさんがこちらに近づいてきていた。

「ここ、いいかな。いつもより早く起きちゃうし参ったよ」

 返事をする前にブチハイエナさんはわたしのとなりに座ってサンドスターが吹き出す方を見つめていた。

 山からの音だけが響くしずかな夜。


 どのくらい過ぎたのか―とても長かったような、あっという間だったような―サンドスターの音が落ち着いたころ、ふとわたしは起きてからジャパリまんを食べていなかったことに気付き、わたしの分と…あとブチハイエナさんにジャパリまんを渡した。あ、すまないねとジャパリまんを受けとったブチハイエナさんともくもくと特にお話もなく食事になる。

 紙が擦れる音と食べる音がしずかにこの場を包む。


 食べ終わって少しわたしはぽつりぽつり会話にならないくらいの話をしていたけれど縄張りに戻るとのことでお別れになった。早く起きてしまったからもう一回寝たいみたい。

「一緒させてもらった上にジャパリまんまでもらってしまってすまなかったね。それじゃまた、アードウルフ」

 ブチハイエナさんが行ってしまったあと、わたしは穴をほってジャパリまんの包み紙を埋めながら、あの子はともだちと言えるのかなとやっぱり考えてしまう。ともだちとは言えないよね、うまくお話できてなかったし…と考えるのを終わりにしようとした。でも、とふと思いつく。お話が少なかったからともだちと言えないと決めてしまうのは少し早いかも。なぜかそんな気がした。

 次もまた…と思ったところでボスさんからもらったジャパリまんはブチハイエナさんにあげたので残りがないことに気づく。たしかじゃんぐるちほーの近くにもボスさんがいると聞いた覚えがある。これからはさんぽの道を増やしてちょっとだけジャパリまんを多めにもらいに行ってもいいかも知れない。そう思ってわたしはさんぽを始めることにした。

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ともだち 本羽すうぷ @soup_motohane

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