溢れる想いと思いやりのすれ違いと丸ごと全部

スポーティな小春ちゃんと女の子の心を持つ同級生男子・おぼろ君。
気になる彼の女装姿をイタイではなく、助けてあげたいと思った時から二人の『女子友』的秘密のおつきあいが始まる。小春ちゃんは おぼろ君への恋心を、おぼろ君は自己嫌悪をそれぞれ胸一杯に抱えたまま。

物語の先は知りたいけれど、 相手の指先の動き、灯りに照らされる肌、揺れる心模様まで繊細に描かれ、愛しさ溢れる場面の数々に急いで読むのが惜しくなるほど。

日頃 コミュ力不足で苦労しがちの私なので、想いを言葉にするのも、とまどい 時に立ちすくむ彼の背中を押してあげるのも巧くできない不器用さに悩む小春ちゃんの気持ちは痛いほど伝わってくる。周囲を気にするあまり、自分が求める姿に悩むおぼろ君の窮屈さも。

ほろ苦いラストではありますが、丸ごと好きと言える相手に出会えた事、過ごせた時間は貴いものだと思わせてくれる 読みごたえのある作品です。年の初めに 良い時間を過ごせました。

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