読み始めると止まらず、完結済みの時点だったので全話一気読みしました。主人公であるシウは暗い過去(前世)を持っていますが、その経験を自分の血肉にして新しい生を満喫しているところが読んでいてとても楽しいです。他人からの嫌がらせを受けても、自分から仕返しをしたり見返してやろうと行動したりすることはほとんどないため、ざまぁ展開が好きな人には合わないかもしれません。最初の方では「それで済ませるんだ、大人だな」と感じましたが、読み進めるにつれ、シウの性格というのが何となく分かるようになり(個人的感想です)、「シウらしさ」が現れているように思います。
どんな世界だって、幸せなことばかりじゃない。
辛いこともある。どうにもならないこともある。
そんななかで、どうやって大切な仲間を守ろうか、どうしたら楽しく幸せになれるか、模索しながら生きている。
そんなお話だと思いました。
主人公は、理不尽な扱いを受けても、けして相手をひどく痛めつけたりしません。立ち向かいはしても、仕返しはしません。というとちょっと違うかも。相手と同じ位置に堕ちる事はしない。が近いのかな。
そういうところが物足りないと思う人もいるでしょうが、私は、出来るだけ穏やかで、優しく公平であろうとするこの世界観が好きです。
人を許せる人になりたい。
そう思わせてくれた主人公に、登場人物たちに、感謝します。
文章がしっかりしており、誤字や格好つけてみょうちきりんになった言い回しなどがありません。
また、転生やチートといった要素を入れながら、安易なハーレム展開を避け、物を作って商家に作り方を売ったりと面白い動きをしています。
戦闘・日常の問題など全体的に非常にあっさり片付きます。
伏線やギミックといったものも、ほぼありません。大体が場当たり的で、かつその場で解決します。
ここら辺は好き嫌いが分かれるでしょう。
一点残念なのは、作者さんの悪役の扱い方。
悪役という役柄ありきで書かれたようで、精神が老人で柔らかめの主人公が、相手が嫌な事言った小さな女の子でも、急に人が変わったように挑発的になって騒ぎを収めるどころか更にヒートアップさせ、少女の家とかギルドとかの問題まで大きくします。
子供の言う事とか、注意するとか、そういった気配がまるで無く、無知な女の子を周り中が…と正直読んでて可哀想でなりません。
そこだけ、読む前に注意を。