エピローグ
アパートに戻った優衣は、これ以上心配を掛けないよう
不思議と髪の色のことについては言及されなかった。
部屋に戻ると春華と持ち帰ったパフェを食べる。
半分溶けていたが、それでも春華は嬉しそうに頬張る。
「お母さん、あんまりはしゃぐと怒られるから……」
「普通の人間にはこっちから話しかけないと気が付かないから大丈夫だ」
ああそうだ、この人は妖怪だったのだ。
……ということは
「ねぇ、お母さんって妖怪なんでしょ? ……私も妖怪なの?」
「んー? そうじゃないのか?」
「だって私、妖術……っていうのかな? そういうの使えないし。もしかしてお父さんが人間だから? お父さんは今どこにいるの?」
「そんなのいないぞ。必要なのか?」
「え!? だって……えと……お父さんがいないと私産まれてこれないじゃない」
「優衣はわたしの腹ん中から出て来たんだぞ。お父さんってのはいないとまずいのか?」
「…………」
……どうやらまだまだ謎が山積なようだ。
パフェを食べ終わると結構いい時間になっていた。春華はまだ居たそうにしていたが、優衣に迷惑がかかるといけないのでしぶしぶ頷くも、また明日来ると言って帰って行った。
(はぁ……燃えるゴミの日、明日だったかな)
散らかったテーブルの上を片付け、洗面台の前に立つと驚いた!
髪が元の色に戻っていたのだ。道理で園江が何も言わなかった筈である。早速菖蒲に教えてもらった電話番号を掛けて報告することにした。茜の話からするに、菖蒲は悪い人間(天狗?)では無さ気だし、何より世話になったのは事実だ。驚いて家を飛び出して来てしまったことも詫びたい。
だが菖蒲の家は留守であった。
(……出ないってことは、北上も家に居ないのかな)
まだ京は山の中を一人彷徨っているのだろうか。昼間、菖蒲と話した親子の関係を思い出す。特別変わっている関係、そう思っていた。
けど自分の場合はもっと変わっていた!
(……親子って他から見て何ともなく見えるけど、詳しく見るとどこの家も変わっているものなのかな……って、そんな訳ないよね)
箪笥の引き出しから、ずっと履かないで仕舞っていた靴下を出す。
明日履いて見せたら春華は気づいてくれるだろうか?
大切に枕元へ置く優衣だった。
遠き未来のその後で ─優衣の場合─ おしまい
遠き未来のその後で 木林藤二 @karyou
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