テレパシー探偵のスランプ事件簿!

ちびまるフォイ

犯人はこの中にいる!!

警察が事件の調査をしていると、現場にひとりの男がやってきた。


「なんだお前は。ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」


「ええ、ええ。わかってますよい。わかってます」


男は自分の名刺を警察官に差し出した。


「テレパシー……探偵?」


「ええ、ええ。自分は未解決事件専門の

 テレパシー探偵ですよい。はい」


「今度の事件には首をつっこまないほうがいい。

 悪ければ命を落とすかもしれないぞ」


「それじゃ探偵の仕事になりませんよい」


テレパシー探偵は殺人事件の起きた部屋をぐるりと見回す。

死体は片付けられて、何人もの警察官がすし詰めになっている。


「それで、なにかつかんでいるのか?」


「いえ、いえ。なにも」


「は!? だったらどうしてここに来たんだよ!?」


「自分はテレパシー探偵ですからよい。

 テレパシーを送ることで犯人にぼろを出させるんですよい」


「どういうことだ……?」


探偵はむむと眉間にしわを寄せてテレパシーを送る。

けれど、なにも起こらない。

調査中の刑事のひとりがポケットの手帳を落としたくらい。


「……変ですよい。普通ならここでなにか起きるんですけどよい」


「テレパシー送っているのか?」


「普通ならテレパシー送られた犯人が、

 頭をかき乱されてなにかミスをやらかすもんですがよい……」


「犯人がこの場にいないのが原因じゃないか?」


そこで警察は第一発見者の遺族や、愛人、はてはご近所さんまで集めた。


「ちょっとどういうこと!?」

「俺たちが犯人だとでもいいたいのか!」

「そんなのあるわけないじゃない!」


「さぁ、テレパシー探偵。犯人にぼろを出させるんだ」


「ええ、ええ。任せてくださいよい」


テレパシー探偵はふたたびテレパシーを送った。

でも、集めた人の中にそれらしい矛盾やぼろを出す人はいなかった。


「犯人たちはこの中にいないってことか、

 それともテレパシー探偵なんて嘘なのかどっちかだな」


「いえ、いえ。誤解ですよ。自分のテレパシーは本物ですよい」


「とかいって、本当は別の目的があるとかじゃないか?」


「違いますよい。だったら本気の力を見せてあげますよい」


「最初からそれを使えばよかったじゃないか」


「強力すぎるテレパシーは犯人を苦しめてしまうんですよい。

 誰かを苦しませるのは自分のポリシーに反するのですよい」


「あのな……。犯人はこれまで完全犯罪をしてきたんだぞ。

 証拠もないし、手掛かりもつかめない。

 そんな相手に遠慮もなにもないだろう?」


「わかりましたですよい」


テレパシー探偵は静かに力をためた。

そして、カッと目を見開くと一気にテレパシーを送った。


「うああああああああ!!!!」


犯人は一気にもんどりうって苦しみ出した。

それを見てテレパシー探偵はすぐにテレパシーを中断した。


「あなたが犯人だったんですよい……」




「ちがうな。犯人"たち"だよ、探偵さん」


警察官たちは、部屋に残っていた自分たちの証拠を片付けると

犯人を知ってしまった男を静かに消した。

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