第2話 うたひめ
「でも、せっかく可愛くなったハシビロちゃん、みんなに見てもらわないとあまり意味ないよね」
サーバルちゃんがぼそっと言いました。
「うーん、どうにかしてみんなに見てもらえばいいんだね…」
「え、これ以上何かしてもらうのは、申し訳ないよ…」
「大丈夫!気にしないで!」
また、サーバルちゃんが自信満々に答えました。それにしても、ハシビロコウちゃんの声可愛いなあ。……あ!
「歌を歌ってみるのはどうかな?」
「……え。でも、私歌ったことないし、そもそもあまり大きな声出ないんだけど…」
「大丈夫!ちょうどいいフレンズさんたち知ってるの!」
サーバルちゃんは、勘付いたようで「…もしかして」と呟きました。
「まずは、ここで発声練習のトレーニングをしましょう」
ぼくとサーバルちゃん、ハシビロコウちゃんの三人で訪れたのは、こうげん・ジャパリカフェです。
「はい、どうぞぉ~。よく来たねぇ~」
アルパカさんが紅茶を出して、三人をもてなしてくれました。
「ありがとうございます!」
「ありがと!」
「あ、ありがとう。それにしてもどうして、発声練習を…?」
アルパカさんから紅茶を受け取りながら、ハシビロコウちゃんが尋ねてきました。
「それはね——」
と説明をしたそのとき。
「わたしはあ~トキい~」
と外から、カフェの窓ガラスをビリビリとならすほどの大音量の歌声が聞こえてきました。「…やっぱり」とサーバルちゃんが耳を塞ぐ隣で、ハシビロコウちゃんが目を見開いて何事?!という顔をして言葉を失っていました。
「相変わらず音程とれてないんですけど!」
「あら、私はちょっとは上達したと思ってるわよ」
話しながらカフェに入ってきたのは、ショウジョウトキさんとトキさんです。
「あら、かばん、サーバル。ひさしぶり」
「おひさしぶりです!」
「相変わらず、すごい歌声だね…!」
「あら、ありがとう。そこの子は見かけない子ね?」
「…ハシビロコウです」
「あの、トキさんとショウジョウトキさんにお願いしたいことがあって…!ハシビロコウちゃんの発声トレーニングのコーチをお願いしていいですか?」
「お安い御用よ。ファンの頼みとあっては断れないしね」
「私も別に構わないんですけど」
「「ありがとうございます」」
ハシビロコウちゃんと一緒にトキさんたちに頭を下げました。
——数日後。
トキさんたちに預けたハシビロコウちゃんの様子を見に来ました。あれ?なんだか、うまくいってなさそう…。
「調子はどう?ハシビロちゃん?」
「やっぱりわたしには無理そう…。トキさんにも『全然ダメね』って言われちゃったし」
「気にしないで、ハシビロちゃん」
ハシビロコウちゃんの声もかすれ気味です。
「とりあえず、カフェで休憩しましょう」
ぼくの提案にみんなが賛成しました。
——カフェにて。アルパカさんが今度はハーブティーを振舞ってくれました。
「お疲れ様ぁ~」
「ありがとう。(ゴクッ)あれ?喉の調子が良くなった気がする」
「あぁ~。それはねぇ~、喉に効くお茶なんだよぉ~。たくさん飲んでぇ~」
確かに、ハシビロコウちゃんの声ももとに綺麗になっています。
「そうだ!ハシビロちゃん!もう一回、歌ってみなよ!」
サーバルちゃんの提案にハシビロコウちゃんは頷きました。
「~♪」
「すごーい!いい声出てるじゃない!」
「ちゃんと、声出てるんですけど」
「あら、やればできるじゃない」
「ハシビロコウちゃんが練習に行き詰っていたのは、やりすぎだったんですね。トキさん、ショウジョウトキさん、アルパカさん、ありがと!」
——またまた、数日後。
瞬く間に、新生アーティスト・ハシビロコウの可愛さと歌声はパークじゅうに広がり、トキさんたちより人気が出てしまいました。
「話が違うわ…」
そう、呟くトキさんの頬はちょっと緩くなっていました。
いめちぇん しょん@朧月夜 @toki27
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