第2話 車両

ハッピージャックは鉄道にいた。

TEE。

天蓋の駅で渡されたアタッシュケースを持って。

乗り込んだ車窓を定期的に教会の塔が過ぎていく。


 晩秋の山間部は冷える。きらめく星空が雲にさえぎられたとき、駅に車両が滑り込み、降り立った。

「木曜倶楽部のことですが」

 ホームで待っていた若者は顎下にだけ伸ばしたひげを触り、質問した。

「たいした進展はない。実在するのかどうかも、わからん」

「しかし、市役所の爆破は、決して単純な政治目的とは思えません。すごく意図的だ。何かをカムフラージュしていますよね。木曜倶楽部が実在するなら腑に落ちます」

「だからといって、うわさに過ぎない団体があるともいえまい?わざと流されたデマかもしれない。架空の組織に見せかけた産業シンジケートということもありえる。謀略の中の謀略」

「古い炭鉱で、何か熱心に作業していますよね。確か、政府系の炭鉱」

「まあね。われわれも気にはしている。ただ、調べようとすると、横槍が入る」

 ジャックは礼を言って、帰宅した。いろんなファクターを頭の中に並べてみた。NATION UNDERGROUND GROOVEは最近、真正社会主義を標榜して、表向き、破壊活動は行っていない。反グローバリズムを謳い、大きな国際会議場周辺でビラを配ったり、サイトで主張するぐらい。しかし、実は、そういう表の顔の下に、木曜倶楽部というテロ部門がある、というのは最近の都市伝説。さて。

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