3B

tamatama2

第1話 プロローグ

予めご了承ください。


ハッピー・ジャックはマジック・バスに。

ビュービューと風が吹く中、月の光に照らされバスが行く。雲が流れ、黒い森を抜け、ふくろうが飛び立つ。赤、赤、赤。そして、まさにさよなら。家族、土地。行く先は北へ、極北へ。揺れるバスの中、隣の老人が言った。

「今、何時?」

オレンジ色の手袋の指を組み合わせる。

握っては閉じる。

「あなたでしたか。ぜんぜん、気が付きませんでした。午前2時です。どちらまで?」

それに答えず、手紙を差し出した。


真っ青な封筒に、見たことのない紋章が封蝋してある。

中に入っていた便箋には、意味をなさない数列と、水仙の花の絵が印刷されていた。

これはお馴染みの命令であり、迷惑な伝言だ。


「ジャック、お前の目玉がほしい。お前の耳が食いたい。見ることも聞くこともすべて奪おう」と全く劇的ではない声でで老人は呟いた。


窓は、吹き付ける風にびりびり揺れ、車体は耐え切れないように大きくきしむ。老人はガラス玉のような目で、瞬きひとつせず、笑っている。

バスは7000本の樫の木の中を、ライトをはねながら疾走していく。老人は、壊れたステレオのように呟くが、轟音の中クリアに聞こえる。

「おい、魔王が目玉をくれって言うのだが、どうする?ひとつやって、眼帯をするのも悪くない。君はどう思う?」

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