けものフレンズという世界はフレンズ達の放つ、眩くそれでいて暖かな輝きを描いた作品である。しかし、描かれていたのはなにも光だけではない。光に潜む形で闇もまた至る所にちりばめられていた。
この作品は、その闇の部分をオリジナル設定でより色濃いものにして増量し、光と闇のバランスを逆転させたものだ。原作以上に手ごわく、厄介な闇にフレンズ達はかつてない苦境に立たされている。
だが、光とは闇があってこそ際立つもの。考え込まれ、練りこまれたオリジナル設定によってその色を増した”闇”は、フレンズ達の輝きをより一層尊く、素晴らしいものに仕立て上げている。
タグのシリアスやコンセプトで敬遠している人がいるなら、勇気を出して読んで見て欲しい。
一度読んでしまえば、情景が浮かんでくるような丁寧な描写や、違和感を感じさせないキャラの台詞や行動、アプリ版を想起させるような要素から、この作品のすばらしさと、けものフレンズに対する作者の愛の深さがよく理解できるはずだから。
肉食獣や草食獣と言った元々の動物間にあった弱肉強食の関係から脱してお互いに友達になれる、それが『けものフレンズ』の優しい世界を創る根本であり必要不可欠な条件でした。
なら、もし──。
そんなフレンズ達が元々の野生動物返りを起こしてしまったら。
ついさっきまで仲良く語らっていた友達を“補食対象”として襲ってしまう様になったら。
この物語はそんな“IF”であり、アニメでは有り得ないだろう展開──二次創作の醍醐味の様な作品であります。
かばんちゃん達が次から次へと襲いかかる『異変』をどう解決していくのか、ジャパリパークはどうなってしまうのか、『異変』の原因は何なのか……とても続きが楽しみです。
「けものフレンズ SS」で検索していて発見しました。シリアスなけもフレ……何となく想像だけはしていましたが、こうやってしっかりとした設定やそれぞれの深刻な状況、悲痛な心理が描写されているのを見ると、ただただ純粋に引き込まれます。文章の運び方や言葉の選び方がとても丁寧で、それでいて迫力がある、と感じています。
とにかくキャラクター(フレンズも、元となった動物も)の特徴を上手く捉えていると思いました。ネタバレになるかもしれないので詳しい感想は控えますが、アニメを思い出させるとあるフレンズの急所の位置についての展開には思わず感嘆しました。アニメ、何周もしててよかった!となりましたw
皆さんにもぜひ一読してもらいたいです。これから先も楽しみにしています!