第1夜

純白。

それは何よりも儚く淡い、何よりも穢されやすい色

けれど同時に、それはどんな色よりも美しく気高い色である。

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ふとそんな言葉を思い出した。昔はこの言葉の意味がわからなかったが、隣で眠る少女を見ているとわかった気がしてくるのだから不思議なものだ。

景色に溶けそうなほど真っ白で透明感があるのに、ひときわ目を引いて離さない真紅の髪。そして少女がまとう凛とした空気。ただ、こうして眠っていると年相応かそれ以下に見える。

「ん…」

寝言とも寝息とも取れるような声をあげ、軽く寝返りをうつと少女は薄く目を開けた。

「おはようございます、ティア。よく眠れましたか?」

「ん…?おはよ…?」

まだぼんやりとした様子であくび混じりの返事が返ってくる。


「次の目的地はどうしましょうか…どのあたりか分かりませんか?」

パンの欠片を口に放り込み、飲み込むとティアは答える。

「…この街きてからわかんない」

「そうですか…。手当り次第に回るわけにも行きませんし…」

どうしようかと考えながら地図を眺めていると、ティアがある街を指さした。

「王都…どういうつもりですか?」

「ここ…麒麟(きりん)聖騎士団…。情報あるかも」

「なるほど…。確かに可能性は大いにありますが、ティアが大丈夫ですか?」

「うん、アルスのためならがんばれる」

アルス・アークライト。2年前行方不明になった1人の男。ティアが長年想いを寄せている者。私以外にティアが唯一心を開く者。こいつを探すためティアは旅にでた。何度も止めたが、ずっと寄り添ってきた私より大事だと言われたからには仕方ない。だけどティアをひとりにするのはどうしても不安だったから、私もついて行くことにしたわけだ。

「じゃあそうと決まれば早いうちに出てしまいますか、上手く行けば一月経たずに着けるでしょう。」

「うん」

ティアと私は荷物をまとめ、旅に出てから3つ目の国『パール王国』をでて王都へと歩き始めた。

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「あら、とうとう王都に向かうのね…。ふふ、そこで会いましょうリィ。あなたの大好きな彼と一緒にね…」

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世界が救われる時 水無月恋歌 @301806

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