今日のおみやげ

アオイ

第1話

「うわぁ…何にしよう…迷っちゃう!」

「ホント!どれも可愛いよね…食べるのが勿体ない!」

今日も女性たちの声が飛びかう老舗のタルト専門店には、宝石のように煌めいているタルトたちが所狭しと並んでいた。


「スミマセン。手前のコレを1つと、そっちの奥のやつ1つ。以上で」

「こちらの“季節のフルーツタルト”と“とちおとめのタルト”の2点でよろしいでしょうか。合計で1,350円になります」


こんな店に来てまで買っているが、自分自身はあまり甘い物は好きではない。自ら好んで食べることなんて、勿論ない。

でも、甘い物を買って帰ると君の笑顔が見えるから、今日も「仕事のついで」とかこつけて甘い物を買って帰ってしまう。


今日の君はどちらを選ぶだろうか。きっとすごく悩むのだろうな。その姿さえ愛おしいなんて君には恥ずかしくて絶対に言えない。

そして、君は満面の笑みを浮かべながら食べるのだろうな…その笑顔に癒され、心が満たされていくんだよ。


「大変お待たせいたしました。2,000円お預かりしましたので、650円のお返しになります!」

小動物のようにキビキビと動き回っている店員からお釣りと可愛らしいイラストに彩られた箱に収められたタルトを受けとり、足取り軽くお店を後にした。


「ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!」

私の背後ろで店員の合唱が響き合っていた。

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今日のおみやげ アオイ @stormsakura_aoi

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