第五話 事件再び
「ふわあ…」
ここ最近、通り魔事件を追っているため徹夜が続き寝不足で大きなあくびが立て続けに出てくる。
しかし、今は通り魔は動いてないのかなりを潜めているため足取りはつかめなく
聞き込みも成果は上げられていない。
一刻も早く捕まえないと、新たな犠牲者が出るのは見えてるのに、それすら出来ないことに苛立ちを感じ始めている。
ふと身に着けてる時計に目を向けると、午前2時になっているとこだった。
このままこの感情で動いても冷静に判断が出来なくなる。
一旦、家に帰って寝て切り替えて取り掛かった方がよさそうだ。
夜勤組に声をかけ、出ようとしたときに出動要請が流れた。
『通達!○○町××にて女性一名襲われた模様!まる害逃走中』
○○町××って言ったら、最初の通り魔があった場所じゃないか…?
一度犯行をした場所でまたするものか?
…ここで考えても仕方ない。
事件があったのなら行かなければ!
「あっ!高瀬さん!ここは俺たち行きますから帰って寝てください。ろくに寝てないの知ってますからね?」
「ここで帰っても寝れるか。お前たちが心配で寝れんわ!」
そういうと夜勤組の後輩は「ひでー!」と叫びながらも、もう止めることもしなくなり、一緒に現場へと向かった。
現場に着くと交番勤務の警察官に、すでに到着した刑事やら救急車、野次馬でごった返していた。
俺は見知った顔を見つけ、後輩に「状況確認して来い」と指示を出し
その人物に駆け寄った。
「武本さん!!」
「なんだ、高瀬。お前まだ帰ってなかったのか?」
「いや…帰ろうとしたんすけど、ちょうど事件が起きて気になって出てきちゃいました」
気まずさから頭をがしがしとかいた俺に「来ちまったのはしょうがねぇな」と苦笑し、歩き出した。
そのあとに着いていきながら、武本さんは話し始めた。
「被害にあったのは、20代女性。帰宅途中にここを通ったら背後から声をかけられたそうだ」
「声を…」
「ああ…お前は通り魔か?とその一言。女性は振り返って声の主を見ると真っ黒な姿をした髪の長い女が大きな鎌を持って笑っていたらしい。
あまりの恐怖に言葉を失った女性に女はもう一度問うて女性は首を横に振ると、大きな鎌を…」
武本さんはそこで言葉を噤むと、手を横に小さく振ったあと指を指した。
その先を見るとコンクリートの壁に深々と大きな横傷ができていた。
これは…人間技じゃねぇな……
その傷を見てそう感じた。
「それで、女性は無事だったんですか?」
「念のため病院には搬送したが、怪我一つしていないそうだ」
その言葉にほっと息を吐き、今回の事件を考え始めた。
女はお前は通り魔かと問いかけた…
ということは、通り魔の被害にあった身内か誰かが復讐で犯人を捜していると推測する。
だが、この傷と被害者の目撃した大きな鎌に真っ黒な姿…
非科学的なことは考えたくはないが……
「人がやったもんじゃないな…」
ぽつりと独り言のようにつぶやいた武本さんの言葉にばっと顔を上げ、武本さんの顔を見る。
視線は傷の壁を見ていたが、俺の視線に気づき気まずそうに笑った。
「いやー、あんまり考えたくはないんだがな…どう考えても目撃した姿にこの傷を見るとどうも……人がやったとは考えにくくてなぁ…」
刑事として非科学的なこと考えるもんじゃないなと言葉を紡いだが
眉間にしわを寄せ、それ以外考えられないと顔に書いてあるようだった。
現場は鑑識が手がかりを捜し、地面に這いつくばって目を凝らし
後輩は目撃したものがいないか聞き込みをし、KEEP OUTの外では野次馬が未だにいる。
ふと、野次馬の中にセミロングのこれと言って目立つ容姿はしてないが、目についた女性を見つけた。
きっとその表情だろう。
他と違い事件に目を輝かせるでもなく、不安そうにするでもなく
恐怖の奥にある決意のようなものを感じた。
女性は俺の視線に気づいたのか、慌てて目をそらしその場から立ち去った。
「あっ…おい!」
「どうした、高瀬。何か気になるものでもあったか?」
武本さんになんと言ったらいいのか分からず、「いえ…見間違いでした」というしかなかった。
「とりあえず…」
「はい、聞き込み諸々ですよね」
疲れた体に鞭を打つように気合を入れて言うと、なぜか拳骨をもらい痛さのあまりうずくまり涙目で武本さんに訴えた。
「馬鹿っ!お前は帰って休め!この事件の本部は立ち上がるだろうが、進展はしないはずだ。倒れたら元もこうもない」
「しかし……!」
抗議の言葉を上げたが、一睨みで「同じこと言わせるなよ」と言っているようで素直に「了解です…」と言わざる終えなかった。
誰かっ…止めてください! 冬木 麻衣 @uw_mai2
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