2人ぼっちのお化け屋敷
けものフレンズ大好き
2人ぼっちのお化け屋敷
皆さんひとりぼっちはいやですよね。
それはどんなフレンズも同じ。
でも中には自分からひとりぼっちになろうとする変わった子もいます。
今日はそんな子が主人公のお話……。
「・・・・・・」
黒セルリアン討伐から数日後、ツチノコちゃんはまたいつものように、ジャパリパークの遺跡を調査する生活に戻りました。
あのとき色々なフレンズと知り合いましたが、今は以前と同じ一人だけの生活です。
「……別に寂しくなんかないぞ」
ツチノコちゃんは自分に言い聞かせるように、独り言をいいます。
でも本当は仲良くなりたい。
ただどう言えば良いのか分からないし、仲良くなってから何をすれば良いのか分かりませんでした。
「それを考えると、あいつはなんでか楽だったな……」
今はもう海の向こうに言ってしまったかばんちゃんを思い出します。
「はー、こういうのは俺らしくないな。よし、気合いを入れてジャパリパークの遺跡を探検するか!」
ツチノコちゃんは気を取り直し、探索を再開します。
今日調べているのは、遊園地にあったお化け屋敷。
『無事セルリアンを倒せたアンドかばん何の動物か分かっておめでとうの会』が終わると、みんなはすぐに自分の縄張りに帰りましたが、ツチノコちゃんはどうしても気になって戻って来たのでした。
「しっかし悪趣味だよなーここ」
お化け屋敷と言っても普通のお化け屋敷ではなく、脅かし役の人形は全てフレンズ。血まみれのフレンズの死体がそこかしこに転がっています。
機械が未だ生きているのか、さきほど悲鳴も聞こえてきました。
そのため、今まで誰も近寄らなかったのですが、その分何か良いものがあるのではないかとツチノコちゃんは考えました。
でもこのときのツチノコちゃんが見つけたのは、それとは全く違うモノでした。
「ん、この人形どっかで見た気が……。それに、妙に生暖かい……」
「ぶはぁ」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
なんと、地面に倒れていた人形が、突然立ち上がったのです!
ツチノコちゃんは例によって、瞬時に通路の壁に隠れます。
「なんだぁお前! やんのかこらぁ!! しゃー!!!!」
「うう……なんなのよもう……」
倒れていたのは人形ではなく、れっきとしたフレンズでした。
それもツチノコちゃんが見たことがある顔です。
「確かお前は……」
「待って、私の方が先にあなたを当ててみせるわ! あなたはこんな暗いところにいても平気でその姿……蝙蝠のフレンズね!」
「違うわアホ! キシャー!!!」
ツチノコちゃんはびしびしと地面を尻尾で叩きます。
「ツ・チ・ノ・コ・だ・よ! いい加減覚えろ! お前はアミメキリンだろ!」
「くっ、先に言い当てられるとは、名探偵らしからぬ失態だわ」
「お前が名探偵ならほとんどのフレンズは超名探偵だよ!」
「ぐぬぅ!」
ショックを受けるキリンちゃん。
ツチノコちゃんからすれば、何故こんな当たり前のことでショックを受けるのかむしろ不思議なほどでした。
「それで、こんな所に何しに来たんだ?」
「それよ! 実はここで殺人事件が起こったって話を聞いたの! 実際こんなにフレンズの死体が……あ、また気絶しそう」
「あー……」
ツチノコちゃんは1秒で事情を察しました。
おそらくどこかの間抜けなフレンズが人形を死体と勘違いし、それを真に受けたこのポンコツフレンズがわざわざ調べに来た。
そして人形を見て気絶してしまった。
最初に聞こえた悲鳴はこいつのものだったのだろう、と。
「言っておくがそれはお前の勘違いだ。ここにあるのは全部ただの人形だよ」
「でもこれだけあれば、本物が一つぐらいありそうじゃない!」
「なんで嬉しそうに物騒なこと言うんだよお前は!」
「じゃあこうしましょう」
キリンちゃんがふふーんと自信たっぷりに言います。
「ここで死体を見つけたら私の勝ち! いいわね!」
「いいわねって、じゃあどうすれば私が勝つんだよ」
「それは自分で考えて!」
言うが早いか、キリンちゃんは駆け出します。
そして――。
「きゃー!!!!!!」
すぐに涙目をこすりながらキリンちゃんが戻ってきました。
「……ぐす、ここは協力して探しましょ」
「好きにしろ」
ツチノコちゃんは呆れながらも、キリンちゃんの面倒をみることにしました。
騒がれると面倒だと自分自身に理由付けていましたが、本当はずっと一人で寂しかったのかもしれません。
「ところでこんな所で何してるの?」
歩きながらキリンちゃんが聞いてきます。
その手はしっかりとツチノコちゃんの服を掴んでいました。
「ジャパリパークの遺跡を探検してるんだよ」
「なんのために?」
「ただの知的好奇心だ。それ以上の意味は無い」
「ふ、ふーん」
キリンちゃんはよく分かっていませんでしたが、馬鹿にされるのも嫌なのでとりあえずそう答えました。
それからしばらく歩き回っていましたが、ジャパリコインのようなものも、死んだフレンズも見つかりませんでした。
「……帰るか」
「そうね、それがいいわね!」
「お前ひょっとして帰り道が分からなかったんじゃ――」
「それじゃあ行きま――」
「きゃー!!!」
キリンちゃんが言いかけたところで、突然悲鳴が聞こえてきました。
ツチノコちゃんは声がした方向を、ピット器官で凝視します。
今まで人形だと割り切って考えられたのも、この能力が理由でした。
「行くぞ! フレンズが倒れてて近くにセルリアンまでいる!」
「ま、待って!」
2人はお化け屋敷をかけ出しました。
そして――。
「弱いセルリアンで良かったな。あいつも気絶してなかったら普通に勝てただろうし」
「そうね」
遊園地を出た二人は、助けたフレンズを見送ります。
そのフレンズも物見遊山で入ったは良いが、人形に驚いて気絶し、そこをセルリアンに襲われていたのでした。
「はーあ、結局無駄骨だったか」
「そうは思わないわ」
キリンちゃんは首を振ります。
「私達が来たことであのフレンズは助かった。それは事件を未然に解決したも同然、犠牲者を見つけるよりよっぽど素晴らしいことだわ!」
「お、おう……」
予想外の真面目な答えに、ツチノコちゃんは面食らいます。
ちょっと感心してしまったことを誤魔化すように、ツチノコちゃんはキリンちゃんをからかうことにしました。
「それにしてもお前の悲鳴は結構面白かったな。2回もしてるし」
「確かに私は驚いて叫んだけど、それは1回だけだわ」
「でもお前、最初に気絶したときに――」
「あれは暗いのに天井が予想外に低くて、思いっきりぶつけてしまったのよ! 悲鳴を上げる時間も無かったわ」
「え、じゃあ最初の悲鳴は……」
ツチノコちゃんはお化け屋敷を振り返ります。
果たしてそこには本当に何も無かったのでしょうか?
おしまい
2人ぼっちのお化け屋敷 けものフレンズ大好き @zvonimir1968
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