初達成

流石に時間も時間、ゴブリン退治はまた今度……って事で、俺達は冒険者ギルドに戻っていた。



「あのー、この薬草採取のクエスト終わったんですけど……」


「ん?ああ。それで?」


「あれ、これここで受け取ってくれないんですか?」


「……そういう低ランクのクエストは、うちらを通さなくていい。直接持って行きな。依頼書に受領印貰ったら持ってきな」


「……分かりました」


「――あ、討伐系のクエストは別だ。モンスターの種類が分かる部位を切り取って持って来い。血は垂らすなよ」


「は、はあ……」



――――――――


と、いう事があって……今、ヴァリスの街を彷徨っている。


それ、全部こっちがやれって事だよな……

まあ……一応依頼表はギルドが出してるから、そこは違うんだけど。


低ランクだと、色々と苦労する事になりそうだ。



□□□□□□□□□□□□□□


受注可能ランク F~


薬草採取 種類問わず


十本一束 一束百アゼル


□□□□□□□□□□□□□□



「……ん?」


「どうしたの?」


「いや……依頼者書いてないじゃんこれ……」


「え」



依頼者どこだよという突っ込みも、この街だからという理由で納得できてしまう。

冒険者が多そうなこの街のものだから、ある意味『ふるい』にかけているのだろうか。



「思ったより大変だな、低ランク冒険者って……」


「ふふ、探すしかないわね」


「うん」



薬草が欲しい所ってなると……まあ、ポーションを売ってる所……雑貨屋とかか?


……そういえば、俺がぼったくられたのもポーションだったか。



「ちょっと行ってみるか」


「……?どこに?」


「アテがあるの?」


「まあ、そんなとこ」



俺達は、例の雑貨屋の元へ向かう。



――――――



「こんにちは」


「おう、兄ちゃん!ポーション買ってくか?」


……よくそんな笑顔で言えるよな……まあ商売だしそんなもんか。



「先程は『高価』なポーションをありがとうございました」


「……あ!?ハハハ!やっと気付いたか!でも返さねーぞ、もう取引は終わってんだ」


「別にそれは良いんです。ただ、今度は逆にこっちが売りたい側なんですよ」


「ああ?」


怪訝な反応をするおじさん。

まあそりゃそうか……何か言い方怪しいし。


俺は、単に薬草を買い取ってほしいだけだ。



「これ、買い取ってくれませんか?」


「……ん?おう、ケラー草じゃねえか。道で拾ったのか?そうだなあ……十本で三十アゼルが相場だな。まあ特別に五十アゼルで買ってやるよ!」



……。


いや、もしかしたらケラー草が薬草じゃない可能性がある。

王国じゃ薬草だったからほぼ間違いないだろうが――



「ケラー草って薬草何ですか?」


「ん?ああ。一番基本の赤ポーションに使われるから、かなり消費が激しいんだ。だから相場より高くしてやるよ、俺も毎日品薄で困ってたんだ。ったく最近の冒険者共はこういう基本のクエストを――」


何か愚痴っぽい事をつらつらと言い出すおじさん。

……どうやら、これは嘘じゃないっぽいな。


なら。



「俺達冒険者で……この依頼書見て来たんですけど。本当に相場、三十アゼル何ですか?」


「……!?お前らみたいなガキが、冒険者だったのかよ!?」


「はあ……」



そんな驚くかな、普通……どれだけ俺達幼く見られてるのやら。


って、危ない危ない。本題から外れた。

戻そう。



「で、確かに冒険者ギルドは百アゼルって――」


「あーあー!悪かった!百アゼルで引き取る!いくらでも渡せ!!」


「……んじゃ。ミア、樹」



後ろに控えたミアと樹が、どんどんと薬草を積み上げていく。



「――おいおい!まだあんのかよ!!」


「……いくらでも買い取ってくれるんですよね?」


「っ!ま、まあ……ケラー草なら良いけどよ……」



渋々山のように積み重なったケラー草を数えていくおじさん。

どうやらうまくいきそうだ。



「……」


「ふふん」




満足げな樹とミア。

二人のおかげで大分稼げたな、これは。



「――百五十束で、一万五千アゼルだ。後ほら、お前ら冒険者だろ?これが受領のサイン。数も百五十な」


「ありがとうございます」


「……お前ら、薬草採取の専門家か?」


確かに大銀貨十五枚を受け取る。

疲れた顔をして、俺にそう言うおじさん。


まあ、俺の後ろに居る二人はそう言われてもおかしくない。

俺とほぼ同じ反応をする彼を見て、少し悲しくなった。



「……一応、冒険者ですけど」


「ハハハ!そうだったな!まあまた持って来いよ!」


「はい、それじゃ」



おじさんを後にする。

ミアと樹のおかげで、かなり懐が温かくなった。


あれだけ渡しても『また』――ってことは……本当にあの薬草、いやケラー草は使われるんだな。


「ありがとな、おかげで――これだ」


「へへ」


「私達のおかげね!」


「はは、ああ」



ミアが誇らしげに胸を張る。

樹は、渡したずっしりとした通貨入れを嬉しそうに握っている。


初クエスト、達成だな。

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