素人(元帰宅部)がバンドして良いんですか!?

@ONBINN

第1話 始まり的な

教室の窓から、校庭ではしゃぐ同級生の姿が見える。

廊下から、ふざけ合い笑い合う同級生の声が聞こえる。


僕はと言えば、そのどちらにも属さず、自分の席でカバーをかけた漫画を読んでいた。


「嘘だろ…」が口癖のヘタレな主人公が、モンスターとの戦いの中で強くなっていく王道の物語だ(このヘタレな所を自分に投影して読むと楽しい)。



「おーい、もう帰ろうぜ」

「おぉ」

「あ、それ。死んだはずのキャラが助けに来んの、グッと来るよな」



アツい展開に唸っていると、友達のヤマベが肩を叩いた。

ヤマベは僕とは違って集団の中心に居るような人間だ。僕は気楽に帰宅部をやっているが、ヤマベはそれとは正反対にある軽音楽部でドラムをやっている。

更には明るく大らかな人気者で、何で僕と一緒に居るのか未だに知れない。

ただ何かと趣味と気が合う、そんな仲間だ。

…うん、今日も一貫して爽やかである。



「うん。あと主人公が新米戦士なのが応援できて良い」

「こっからメチャメチャ成長するんだよな、最後が楽しみだコイツ」

「ヤマベ、お前何者だよ」



腕組みをするヤマベは、いかにも偉そうに大きく頷くと、僕の前にふんぞり返った。



「そうだ、新米戦士」

「は?」



そのままハッと目を見開くと、馬鹿デカい目がいきなり僕を捉える。

言動がこわい。



「お前のことだよ。俺はこの放課後を待っていたんだ。漫画に現を抜かしてる場合じゃなかった」

「なんだそれ…」


世界の半分をやろう…とでも言いそうな真剣な顔に、思わず唾を飲む。



「ボーカルやんねえか、バンドの」

「えっ」

「文化祭だけで良いんだ、頼むよ」



ヤマベから降ってきた隕石並の言葉を受け止められず、口を開け放した。世界どころか宇宙級の衝撃である。



「なんで…」

「前カラオケで90点出してただろ?」

「あれは偶然…」

「事実だろ。実は、もう顧問にも報告した」

「嘘だろ…」



奇しくも愛読書の口癖を言うことになった僕の目の前には、



「これから、よろしくな」



ラスボスよろしくヤマベが満面の笑みで腕を組み続けているのだった。

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