《物》と《物殺し》を巡る、非常に重厚な世界観の長編小説でございます。
ここにおいて、世界観とは、元来の意味でつかわせて頂きたいと思います。
つまりは、世界での様々なものの意味づけ、更にそこに暮らしているものの見解が素晴らしいのです。世界に暮らすものがある程度共通してもっている対象把握……例えば《物殺し》がみずからを害する危険があるにもかかわらず、客人と見做して世界に受けいれる価値観などから、《物》が暮らしているという一見非現実的な世界が確かな輪郭を結んでいく過程は、まさに圧巻の一言でございます。
意志を持った《物》を器物に還す役割を持つ アザレア という娘もまた、対、世界の意味づけが完璧になされております。
理屈はさて措いて、雰囲気もまた、極上。
物が暮らす町の風景やちょっとした会話の端々から滲む哀愁や感慨は、なんとも言えないノスタルジアを感じさせてくれます。どの人物の言葉にも、ちゃんと長い歳月を重ねてきた、という重みがあって、たまりません。
物に花葬を。
物殺しは、これからどのような運命をたどっていくのか。
続きを楽しみに致しております。