かばんちゃん

ニニム

第1話

 きがつくと、つぎはどこにいけるのかが、たのしみだった。

 きのうえでめざめて、くさむらをかきわけるおとと、いきをはくおとをきいたあのときからずっと、とぎれずにわくわくするきもちがつづいてるきがする。

 もちろんほんとはそんなことなくて、たいへんなこともあった。くろくてすごいおっきなせるりあん。どうなるかとおもった。それにこわかった。でももうだいじょうぶ。みんなでやっつけた。だからじゃぱりまんはおいしいし、わたしはいまもわくわくしてる。

 がさがさ。がさがさ。わたしがくさむらをかきわけるおと。はぁ、はぁ。はぁはぁ。わたしのはくいきのおと。わたしのみみは、わたしのおとでいっぱいだ。だけどわたしは、かばんちゃんのことをかんがえてる。わたしは、ばすをなおすためのざいりょうをさがしてる。

 ばすのこともちゃんとかんがえなくちゃ。わたしはばすのこともかんがえる。

 ばすは、かばんちゃんとみつけた。かわうそとじゃがーとぼすもいた。ときがかばんちゃんをやまのうえにはこんでくれた。わたしはひとりでやまにのぼった。たいへんだった。あるぱかのかふぇがあった。かふぇはこうちゃじゃなかった。やまはのぼるのもおりるのもたいへんだったけど、たのしかった。やまにのぼってるとちゅうでいちどおちちゃったときは、こわかった。

 ばすがなおって、ぼすがうんてんするばすで、いくつもちほーをはしった。くらいところだと、ばすははしりながらあたまがぴかぴかひかった。すなねこやつちのこ。そういえば、ぼすにばすのうんてんをかわってもらったときもたのしかった。びーばーのもくざいをかわにおとしちゃったから、はんせいして、それからさわらないようにしてたけど。

 うみなら、わたしもうんてんできるかな。うみはひろくておおきい。すっごいおおきい。すっごいすっごいひろくて、すっごいすっごいおおきい。うみがあんなにおおきいなんて、じぶんのめでみてみるまでぜんぜんおもわなかった。

 うみは、どこにつながってるんだろう。

 いろいろなところにいった。かばんちゃんとぼす。いろいろなふれんずにであった。さばんなをでたのは、うまれてはじめてのことだった。

 さむいところだって、さむいのはすごくにがてだけど、かばんちゃんといっしょならたのしかった。おけでゆきのうえをすべった。おんせんはぬくぬくだった。ふくがぬげるのはおもしろかった。ふくがぬげると、かばんちゃんがおしえてくれた。かばんちゃんには、びっくりさせられてばっかり。こんどはわたしがびっくりさせるばんだ。

 かばんちゃんにないしょで、ばすをなおす。

 かばんちゃんは、ぱーくのそとにいきたがってたから。

 とはいえ、わたしひとりじゃなおせない。

 みんなにたくさんたすけてもらう。

 かばんちゃんといっしょに、としょかんにいくときめたから、わたしはみんなとであえた。

 さばんなちほーで、くろいせるりあんほどじゃないけど、おおきいやつをじまんのつめでやっつけたあと、わたしはかばんちゃんにひこうきのつくりかたをおしえてもらった。わたしはかばんちゃんのめのまえで、たくさんひこうきをおった。

 ゆうひのしたで、かばんちゃんといちどおわかれをしてからすぐに、それをひとつためしになげてみた。

 ふらふらととぶひこうきは、かばんちゃんがつくったやつほどうまくはとばなくて、たよりなかった。ゆうひはいまにもしずもうとしてた。

 わたしはかばんちゃんのことをかんがえた。

 ふあんになった。

 かばんちゃん、だいじょうぶかな。

 また、なげた。またふらふらで、もっとふあんになった。

 また、なげた。もっともっとふあんになった。

 さいごはもうなげるものがなくなって、わたしはいそいではしりだした。かばんちゃんのもとにむかって。

 かばんちゃんのことがしんぱいだった。わかれたばかりなのに、なんでかもうあいたくなった。

 よるになり、あらわれたぼすが、かばんちゃんとわたしのまえではじめてしゃべった。よるがあさになってから、さばんなをでた。

 そして、みんなとであえた。

 びーばーやぷれーりー、はかせたちがいるから、ほんとうはわたしはなにもしなくていいんだけど、わたしだってなにかしたい。

 だってばすは、わたしとかばんちゃんとぼすが、いっしょにちほーをはしったばすなんだ。

 うまれてはじめてさばんなをでた。

 きがつくと、つぎはどこにいけるのかが、たのしみだった。

 ばすがわたしたちをはこんでくれた。

 すっごくたのしかった。

 かばんちゃんがいたから。

 かばんちゃんといっしょだったから。

 かばんちゃんがいなかったら、どこにいったって、だれとであったって、ぜったいぜったいあんなにたのしくなかった。

 だから、わたしはまた、かばんちゃんについていく。

 ついでに、びっくりもさせる。

 いちどおわかれのふりをして、あとからおいかける。

 あのときみたいに。

 あれから、かばんちゃんにはびっくりさせられてばっかりだから。

 こんどはわたしが。

 わたしは、うみのことをかんがえる。

 うみはひろくておおきい。すっごいおおきい。すっごいすっごいひろくて、すっごいすっごいおおきい。

 つぎはどこにいけるのかな。

 わたしは、かばんちゃんのことをかんがえる。

 かばんちゃんはすごい。

 だから、かばんちゃんがうみにでるとおもっても、ふあんにならない。しんぱいになんてならない。

 たとえわたしがいなくなったって、かばんちゃんはつよいから、ちっちゃくなっちゃったぼすといっしょにやっていける。

 だけどわたしはついていく。

 ふあんだからでもなく、しんぱいだからでもなく、たのしかったから。

 かばんちゃんと、ずっとずっといっしょにいたいから。

 わたしが、ついていきたいから。

 おいついたとき、なんていおうかかんがえる。

 いろいろかんがえて、かんがえて、かんがえて、おもいつく。

 かばんちゃん。

 つまりはこれからもどうか――

 わたしは、ばすをなおすためのざいりょうをさがしてるとちゅうであることをおもいだして、あわててばすのことをかんがえる。

 ばすのことも、かばんちゃんのことも、かんがえるためのざいりょうならいくらでもある。

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