Memory 5/1:選択の追憶

一つ。

そこはある物を借りられる場所。

それは無料で借りられる。

延期届けを提出すれば次に待っている人がいない限り半永久的に借りられる。

借りなくてもその場であれば常に利用できる。

広いところであれば席もある。

発展していればフードコーナーもある。

勉強利用が許可されているところもある。

そして静か。

においも落ち着く。

雰囲気も落ち着く。

そこはどこか。

ここまで言えば誰でも分かる。

図書館だ。



◾️PM16:00



この国立学園の図書館は校舎の中にあるのではなかった。校舎外にあるが、校庭が校舎を囲むように配置されているから、結果少し離れたところにある。

国立学園は地下モールだけでなく、図書館にも力を入れているらしい。中の風景を見れば、ほぼ全ての本があるように思わせるほどだ。もちろん、成人コーナーもある。

ただし、漫画はない。そしてラノベも。そこらへんのあれもちゃんとしているようだった。漫画とかは買って読めとでもいうのか。そのためか、生徒の数はそこまで多くない。一番多いのは、卒論のための資料探しで大学生か、もしくは教授だった。

では私は何のためにここに来たか。無論、前の日記で記したあの"爆発事故"を調べるためだ。

と思い、来て見たのだが、いっこうに資料が見つからない。その記事があったとしても、表面的な状況のみでそれ以上のことが書かれていない。職員さんに聞いてみても他に爆発事故について詳しく載っている本はないとのこと。当時の新聞でさえもそこまで詳しくは書かれていない。

おかしいな。これだけ本があって、4年前に起きた爆発事故についての本がほとんどないなんて……。案外狭いのかもな、この図書館。

諦めて帰ろうかと思ったその時、偶然見つけてしまった。

爆発事故の本じゃない。ていうかそもそも本ではない。人だ。

「よっ」

と、肩に人差し指を突いてあいさつ。ぅわっ! びっくりした〜……と、普通の反応。

「なんだ、アイか」

その人はエイチである。

何か探し物?と聞いてみた。

「ああ。まあ、色々とな」

「エロ本ならあっちだよ」

と、成人コーナーを指差す。

「いや、そこはさっき行った」

行ったんかい。

年頃の男子だ。そんなことでいちいち首を突っ込んだりしないぞ。

なのに、ふとどうでもいいことを思い出してしまった。

「あのさあエイチ」

「うん?」

「ユウちゃんがさ」

「うん」

「性癖聞いてきた」

ぶふぉ!! とエイチ。

「何で今それ言うんだよ!」

「思い出しちゃったんだよ。ただまあ、だいたい一ヶ月くらい前の話だけどね」

当然、記憶ではその頃の記憶なんてない。たまたま日記を読み返してたらそんなことが書いてあったからふと頭によぎっただけ。ちなみに未だにそんなこと聞かれたか思い出せない。

「一ヶ月くらい前って、めっちゃ会ったばかりの頃じゃん」

「うん。会って二日目かな」

「はえーな」

エイチは途端に真顔になった。

「で、何て答えた?」

そんなことで真顔になるな。

「とりあえずエイチがパンイチ姿で逆立ちして興奮してる姿って答えといた」

「なんて具体的……!」

もちろん冗談だが。エイチも冗談で返されたと思い、本探しを再開している。

「それで、何探してるの?」

「……ちょっとね」

「……?」

エイチにしては珍しい。エイチは冗談とか誤魔化しは息を吐くように言うが、窮することはあまりない。

「アイ、昨日もあの夢、見た?」

あの夢。急な質問だったが、あまり驚かなかった。

いや、見てない。と事実だけを述べた。

「そっか」

エイチの視線が、さきほど私がいた場所、そう、爆発事故が載っていた場所へと移される。

「アイ、実はもう少しだけ、あの事故について知ってるんだ」

「え、そうなの?」

昨日教えてくれればよかったのに。

「で、なに? 私の中でしっくり来ないと気が済まないの」

「その前に、アイ。この事実が、本当に"知らない方が幸せ"だとしたら、きみはどうする?」

「知らない方が幸せ?」

そんなことあるのだろうか? 確かに、サンタクロースが実在しないと分かった時は死にたくなったけど……(その死はなんとか乗り越えた)。

「…………」

それを超える悲しみがいったいあるのだろうか。

「私には、知らない方が幸せなんてことはないとは思う。確証はないけれど」

サンタクロースだって、知らなかったら今頃とんでもないことになってるし。

「ただ、問題は知る知らないじゃない。要はその人にとって良いか悪いかだと思う。だから、その、なんていうか、結果幸せである方を私は取る」

「…………」

「となると、知らない方を選ぶことになるのかな?」

「そういうことに、なるんじゃないか?」

「えーでも、知らないのやだなー」

あのままわけのわからない夢を見続けるのは嫌だ。

「前言撤回するかい?」

前言撤回……。別にプライドがあるわけじゃないけど、このままにしておくのもなあ。

でもまあ、とりあえず今はいいか。エイチがそこまでいうくらいだし。

前言撤回はしないが、逆に前言撤回するかどうか聞いてみた。

「僕はしない。これはまさに"知らない方が幸せ"だと思うね」

「そう」

じゃあこの話は終わりだね。と、気になってはしまうので無理やり終わらせた。

「じゃ、私、寄るとこあるから」

地下モールへ行って小説を買いに行かないと。図書館にはなかったから買いに行くしかない。今日買わないと夜また暇になっちゃうし、誤って部活入りたくなる衝動に駆られてしまうかもしれない。思い立ったらすぐ行動だ。

「そっか。じゃあ僕もそろそろ出ようかな」

探し物はもういいの? と聞いてみる。

「うん。結局見つからなかったし、諦める。僕は地下モールに行くところだけど、きみはどこに?」

「…………」

一緒に行こうじゃないか。



◾️PM16:25



地下へ向かう廊下。久しぶりに行き交う生徒を見た。

それはそうと、まさかのエイチも小説を買いに行こうとしていたところだった。

「エイチが買うのは、ラノベ?」

「うん、まあそうかな。アイも?」

「うーん、私はなんていうか、ヤングアダルト的な?」

さて、今の私たちの年代は果たしてヤングアダルトと言えるだろうか。

「へえ、珍しいね。アイのことだからもっとこう、なんていうか、漫画読むと思った」

「表現方法を考えた割に最後バッサリ答えたな」

私そういうキャラだったのか。いやまあ、なんとなく分かるけど。

まもなく、歩いていると、何人目だかあいさつが来た。

「あ、生徒会長、こんにちは!」

「うん。こんにちは」

とあいさつを返したのはエイチ。

…………。

「アンタ、生徒会長だったの?」

「今さらかー!」

嘆くように言った。

「そう。この学園の生徒会長はこの私でございます」

「よくこの学園崩壊せずに済んだな」

「ひどーい」

「女子のスカート丈を短くする案件とか出してそうだな」

「却下されたよ」

「出してたんかい」

そりゃ却下されるわ。

なんか、エイチの考えてることは容易に想像ができるな。ただ、予想を上回ることはあっても下回ることはないということはある。

そこでまたふと、思い出した。

思い出したから、エイチを殴った。ポコ!

「痛! なんで!? なんで殴ったの!?」

頭をさすりながらいうエイチ。

「アンタ、ユウちゃんのことフったみたいじゃない」

「え? いつの話をしてるんだよ。もう半年くらいまえの話じゃんか」

「半年前……」

これは最近と捉えるべきか、昔と捉えるべきか。……昔ではないな。

で? なんでフったの? と聞いてみる。

「なんでって……、そりゃ、そん時はそれどころじゃなかったからだよ」

「それどころじゃなかった?」

どういうことさ?

それに、それどころじゃなかったにせよ、どうしてそんな回りくどい言い方を。

そのうち分かるさ。と、含みのある発言をするエイチ。

またしばらく歩いていると、今度は私にあいさつをして来た生徒が現れた。やっとか。

ていうか、え? 私に? 私別に有名人じゃないし、私の知り合いと言ったらエイチとユウちゃんくらいしかいないけど。

「こんにちは! アイ先輩!」

アイ先輩。ということは後輩か。後輩で、なんかガタイが良くて、ということは、あ、なんかいた気がする。あの日記に書いてた気がする。確か腕に障害持ってる元空手部の……。

「こんにちは、イイくん」

後輩が満足そうに微笑む。ふう、どうやら合っていたようだ。

するとエイチの方にも目を配る。目を配った瞬間、目を見開き、めちゃくちゃ驚いた顔をし、頭を下げる。

「エイチ先輩、お疲れさんです!」

「おうお疲れー」

うお!? なんだ!? エイチとも知り合いか!? ……まあそれは当然か。さきほどの様子から見て、この学園では生徒会長はみんな知ってるみたいだし、敬意を払ってるから、イイくんも例外じゃないか。

しかし、それ以上に問題なのが、私よりエイチの方が上に見られている。納得いかない。

「いやあ、まさかアイ先輩、エイチ先輩と知り合いだったなんて……!」

日記によると登校初日に友達になったらしい。早いな。

それはそうと、このイイ後輩に訂正させないと。

「イイくん、この人に対しては別に畏まらなくていいから。生徒会長だけど名前だけだから」

そもそもどうしてエイチが生徒会長として当選されたか不思議だ。不可思議だ。

するとイイくんはとんでもないと言わんばかりに両手を前に出し手を横に振った。

「いやいやそんな……! キングに対し無礼など……!」

キング? なんだそれ? そんなん初めて聞いたぞ。エイチがまたなんか冗談抜かしたのかな?

エイチの方に視線を移す。それに気づいたエイチは喋り出す。

「まあ、部活やってた頃の話だけどね」

部活? たしかエイチがやってた部活は……、柔道部、だっけ?

「あれ、アイ先輩、知らなかったんですか? エイチ先輩、高校柔道で日本代表だったんですよ!」

知らんわ!!

知っていたとしても覚えてない!

「っていうか、イイくんってたしか空手部だよね? なんで柔道のことも詳しいの?」

「それくらい当時は有名だったんですよ。それに、日本代表だったら誰でも耳にはしますよ」

ああ、それもそっか。

「もう昔の話だよ」

高校時代を高校生が昔の話と語るのは早いと思う。

「そんなことより、ごめんね、ちょっと地下モールで用事があるんだ。また今度、ゆっくり話そう」

用事と言っても小説を買いに行くだけだけどね。

ただ、エイチがこれ以上話したくなさそうにしていたから言わないでおく。

「あ、それはお邪魔をしてすみませんでした。それでは、また今度!」

「…………」

なんか、悪いことしちゃった気分。



◾️PM16: 40



そんなこんなでやっと地下モールへ。イイくんと話してたからか、けっこう時間が経ってしまった。

「まさか、アンタが柔道の日本代表だったとはね」

ギャップがすごいわ。

「……まあ、ズルをしたんだよ」

ズル? 脅したとか?

「ネオ柔道って、知ってるかい?」

「…………」

知るわけない。というか、覚えてるわけない。

「柔道っていうのは投げられたらほぼそこで終わっちゃうんだけど、ネオ柔道は投げられた状態から体を捻って着地するんだ。だから、投げられても倒れない」

「…………」

柔道に、というか、武道に疎い私は何がなんだかわからない。

「でもそれ、公式に認められてるんでしょ?」

「認められてるっていうか、一つの技だしね。本来は全然問題ではないんだけど」

「じゃいいじゃん」

エイチの目が細くなった。

「うん、ルール上はまったく問題ないんだけど、それって真面目に頑張ってた人に失礼なんじゃないかって思うことあるんだよね」

失礼? どうして?

「真っ向から戦って勝てないのは最初から分かってたんだ。こんな体だしね。だから、投げられても倒れない技を磨いた。最初から逃げてたんだよ」

逃げていた。その表現は、少し自虐的だと思う。

「何度何度投げても相手は倒れない。体力が削られていくだけ。そこを狙ってこちらが不意を突く。……そんな攻め方をしていたんだ。それで日本代表と言われても、あまり誇れなかったさ」

「…………」

エイチは自分が悪いと思って表現も自責になっているけど、それは考えすぎだと思う。

「エイチはズルをしたと思ってると思うけど、私からしたらその技を身につけることも、ものすごい努力をしてたんじゃないかって思うけどね」

「それは……、捉え方に寄るよ」

「もちろん。みんなが投げの練習をする中、一人エイチだけが受け身の練習をしていたわけでしょ? それは大変なことだし、なかなかできないことだと、私はそう捉えてるよ。それに、イイくんの反応を見る限りにおいても、誰も恨んでないと思うけどね」

「……そうかなぁ」

納得はしていないようだったが、顔が緩んでいるのが見えた。

「まあ、そう言ってくれると、少しは気が楽だよ」

「…………」

もしかしてエイチがそれどころじゃなかったってのはこのことかな? 心の問題? それほど当時は悩んでたのかな?

「さてさて、やっと本屋に着いた。待ちに待った小説を買おうじゃないか!」

やっと、だ。不思議とここまでけっこう長かった気がする。

「ところでアイは誰の小説を買うんだ?」

「何の、じゃなくて?」

「僕は小説のタイトルではなく作者で決めているんだ」

そんなこだわりも初めて聞いた。たしかに価値は小説よりもその小説を生んだ作者の能力にあるのかもしれない。私は答える。

「作者で言うなら、"おそみねかおり"かな」

「ああ、ブルーバーズ文庫の」

おそみねは小中学生向けの本を書くけど、その文章の面白さは大人が読んでも楽しめるものだった。もともと小学校の担任だったらしく、どうしたら生徒の気を引きつけられるか、という点に思考を巡らせたらしい。経験がとても活かされている。

「僕も、この作者が書いた本は読んだことあるよ」

「今は読んでないんだ?」

「うん。ただ、本を読むきっかけにはなった。そういえば、ここから僕も小説を読み始めたな」

小説を読むきっかけ、か。食わず嫌いの人に歴史の漫画を読ませて歴史の勉強をするきっかけにさせた、みたいな。あるいはおそみねさんもこれがねらいだったりするのかな。

「うん、なかなかいい趣味だね」

なんか上から目線で言われた。

「そういうエイチは何読むの?」

「僕? 僕は、この人だね」

東尾保守……? なんて読むんだ?

「ひがしおたもつさんだよ。聞いたことない?」

だから記憶力ないんだって。

「この人もね、文章が面白いんだよ。ただ、おそみねさんみたいに誰でも読めるものとは違って、少し読む人を選ぶけどね。この人が書く文章はすごく哲学的で、一度惹きつけられればずっと読んでいたくなる、そういう文章なんだ」

「……へえ」

それは少し、読んでみたくなるな。私はその読む人に選ばれるかどうか。

「……なんかエイチ、前とイメージが全然違うね」

複雑な表情をしたエイチ。

「……前はどんなイメージだったんだよ」

「なんか、はっちゃけてて、ちゃらんぽらんなイメージ」

「なんかそれバカみたいじゃないか」

そう言ったんだよ。と言うとさすがに怒るかもしれないからやめた。

「ま、ユウの前だったら、嫌でもそうなるよね」

「え、なる?」

「きみだって、ユウに対してすごくイジるじゃないか」

「あー、なるほど」

私がユウちゃんをイジるのと同じように、エイチはバカになるのか。納得。

たしかに、ユウちゃんにはそうさせる雰囲気があった。心が緩むというか、なんだろうな、むしろ楽しませたいというか、笑顔を守りたいというか。

「…………」

私の"なるほど"との言葉を皮切りに、束の間の沈黙が流れる。それを遮るように言葉が発された。

「それにしても、本はいいよね」

この言葉を口にしたのは誰であろう、私だった。

本選びを再開していた矢先、会話を続けるため何か呟こうとしていたら、こんなことを口にしていた。

「へえ、どうして?」

どうしてと言われましても。そう呟いちゃったんだからしょうがない。なんてことは言えず、適当に説明してみた。

「本ってさ、伝えたいことを簡単に伝えられるでしょ? 表現方法はたくさんあるにしても、伝えたいことは一つだしね」

これは本音。

「うん、まあ、そうだね」

エイチもエイチでそれには納得したみたいだ。

「じゃあ、逆に伝えたいことが曖昧なものはなんだと思う?」

「うーん」

ふと、すぐに頭によぎったものがあった。

「音楽……かな」

エイチは目を少しだけ見開いた。

「音楽? 分かりやすいじゃないか。歌詞にも"愛してる〜"とか"好きだ〜"とか言ってるじゃないか」

「それは、偏りすぎじゃない?」

めっちゃラブソングじゃんそれ。

「例えばさ、ほら、オーケストラとか。あれ訳分かんなくない?」

「きみもじゅうぶん偏ってると思うけど……」

「歌も、歌詞がなくなっちゃったらどんな歌か分からないし」

「それも、何となく分からもんじゃないかな? 明るい歌とか、そうバラードとか、なんとなくメロディで曲のイメージは湧くと思うんだけど」

「分からない。私には、単なる音にしか聞こえない」

高い音、低い音、抑揚のある音。色んな音があるけど、なぜか私には単なる"音"としか捉えられない。

「アイはアレか、オンチなんだな」

「いや、音感はあるつもりだけど……」

エイチの頭にはてなマークが出た。うんまあ、そうだよね。私もよく分からない。

自分から切り出しといて申し訳ないけど、私は話を打ち切るように本を選んでレジへ向かった。

買った本は「孝子」。

病気を患いつつも、親のために尽くす子供のお話。

そして今日のメモ。


エイチ 柔道日本代表 東尾保守





誰でも"知らない方が幸せ"と言われたら、それこそ知りたいと言うだろう。僕が今まで問うてきた人たちもみんなそう言っていた。だが、「教えるが、これを聞いた瞬間からきみは不幸になる。それでもいいか?」と聞くと、みんな返答に窮した。

それはいい。普通の反応だ。それを悪いとは言わない。

ただ、そんなものだろうな、と思ってしまう。

だが、あいは違った。いや、結局は同じだったけど、自分の中で完結していた。知りたいというのは変わらないが、「結果幸せである方を選ぶ」と。知りたいという思いを諦められたのも、どうせすぐに記憶が消えてしまうからだろう。

「……ま、悪くはなかったな」

地下モールで本を買った後、あいと別れた。

ちなみに僕が買った本は、これを読んでる人が男であれば言うまでもない。女の子が読んでるのであれば、愛の本、とでも読んでおこう。

廊下を歩いていると、掲示板に数人集まっていた。なんだろうか。

近づいて見てみると、新しい転校生の情報だった。この時期に転校は珍しいな。今後のためだ。確認しておこう。

転校生の名前は……。

「あっ……!」





その"数人"の中に、あたし、ゆうもいた。だからえいちの前に転校生の名前を見ていた。

「これ……!」

早くえいちに……!

「あ、いた」

なんとえいちが目の前にいた。

「ねえ、えいち! これって……」

もうすでに、あたしの声は届かなかった。それほどまでに、えいちは震えていた。

まるで、待ちに待ったものに会えたような……、そんな表情をしていた。

こんなえいちを見るのは、久しぶりだった。




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