狂女

らうぶ

第1話

「今日からここで働く峰山仁子です。」



彼女はそう言って姿勢よくお辞儀をした。

社員は皆、彼女に見とれて言葉も出なかった。女性社員もあまりの美しさに数秒動けていなかった。


俺はそんな奴らを見て笑いを堪えるのに必死だった。

昔から女に飢えたことは無く、人を好きになる感覚が分からない俺はどれだけ美人であろうと変わりなく見えてしまううのだ。


「なあ御手、今日入ったみねやまいつこ?って人めっちゃ美人だよなぁー。彼氏いんのかな?」


同期の入田満はそう言って弁当の唐揚げをぱくりと食べた。

「いるだろあれは。ま、いても満にはちゃんと彼女いるじゃ無いか。」

「いやいや、峰山に迫られたら俺彼女と別れるわ」


ははっ、と笑いながら話す満に呆れながら言う。


「じゃあちゃんと言ってやりな。彼女さんに」

「え?」


不思議そうな顔をした満の首をむんずと掴む細腕の先には色白の女が立っていた。

「へぇ~。誰と別れるって?」

「え、えと、彼女めっちゃ好きなんだよなーって話をね?」


むすっ、と不貞腐れる高田美帆は顔が整っている満に似合う美人だ。

社内でも人気があり、入りたての頃は色んな男から狙われていた。


「俺が好きなのは美帆だけだって!」


満がそう言うと高田は

「…ホント?」

満更でも無いように言う。

「本当だよ!さっきのは冗談!」


「じゃあ、今日泊まり行くからね!ビール用意しといてよ!」


高田はそう言い放つと、首から手を離しその手でひらひらと手を振るとしなやかな足どりで帰っていった。


「……今日ヤるわ。エナジードリンク買ってきてくれる?」


「………お前って単純な。」

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狂女 らうぶ @nenegyo

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