第6話


宝条は俺に付いてくる。

早歩きしてもゆっくり歩いてもペースを合わせてくる。

「何か用か」と告げるとニコリと笑うだけで何も言葉を発さない。



謎の沈黙が続いていたがそれは宝条の取り巻きによって遮られた。



教室に入るといつもと同じように機械的にクラスメイトは「おはよう」と挨拶をしてくる。



当然ながら柚は来ていない。先に行くと言って置いてきたんだ。当たり前だ。


ちょっと言いすぎたかもしれない。


傷ついた柚の顔が、チラついて落ち着かなくなる。



宝条が現れてから柚に対して余裕が無くなっていた。


「柚は?」



馬の合わないからと言っていつもお互いに干渉せず俺と話すことも少ない今野が珍しく話しかけてきた。


「もうすぐ来るんじゃね?」


これはまずい…いくらイライラしていたからといっても言い方間違った…

またなんか言われるんだろうな…


「…そう。ありがと」


!?

珍しく素直?というか元気ない?



「おい、なんかあったんか?」


「べ、別に無いわよ!……ただ、柚が最近宝条くん宝条くんって…それで…。」


こいつも同じか。宝条に柚を取られてイライラしてるのか。


「なあ……」

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オレはこっち! みやびというか雅 @Miyabi_0816

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