第5話
昨日、電話があったから起こしに行こうか迷った。迷ったけど起こしには行かなかった。どんな顔すればいいのか分からなかったし、なにより余裕がない俺を見て欲しくなかった。
「……涼…」
柚の寂しそうな声で話しかけてくる。
なんだ、起きれんじゃん。俺が起こしに行かなくたって。
自業自得のくせに自分は必要ないと言われているようでイライラしてきた。ほんとに自分のせいなのに。
「…おう。おはよ。」
「あの!昨日は…「おれ、先行くわ」
柚の言葉を遮り早歩きで歩く。
別に柚に怒ってるんじゃない。分かってる。でも、なぜか柚と一緒にいたくなかった。
わざわざ昨日は電話をしてくれて、心配してくれて嬉しかったのに。
かっこわる……
モヤモヤしたまま学校に着くとやたら邪魔な人だかりが出来ていた。
邪魔だと思いながら群がってる人を横目に歩くと聞きたくない奴の名前が耳に入ってきた。
「宝条くんって今彼女とかいるの?」
「宝条くんの好きなタイプとかは?」
「宝条くん!「宝条くん!「宝条くん!「宝条くん!「宝条宝条くん!「宝条くん!「宝条くん!」
宝条宝条うるっせーんだよ!
イライラしながら歩くとそのイライラの元凶の奴が追いかけてきた。
「やあ、君は涼くん…だっけ?」
「は?なんで俺の下の名前知ってんの。お前に下の名前で呼ばれたくない。消えろカス」
我ながら汚い言葉を使ってしまった。
「いやいや、柚ちゃんから涼くん…ああ、橋本くんの話は聞いてるよ。」
柚……ちゃん?
「何の用?」
「彼女、純粋だよね…」
「だから?」
「この手でグチャグチャにしてやりたいんだよ……」
なんの真似だか……茶化してんのかよ。くだんね…
「なんの真似か知らないけど俺には関係ない。」
……柚になにかしたら許さない……
「勝手にしろ」
……柚を守りたい……
「俺は先に行く」
……ごめんな……
言葉とは矛盾して発する心の声に驚いた
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