第8話 甘じょっぱいのは平気かな?
そんなことを考えていると、今しがた起きたのか、ふるふると震える大きなわらび餅が縦に伸びる。
「ピギュー」
「おはよう、やっぱり骨や筋肉はなくても身体をほぐすのは必要なのかね?むしろ全身筋肉…筋肉?」
「ピギュ?」
「ああ、いや、こっちの話だよ。」
なぁに?とでも言うかのように首?を
これ傾げてんのか?歪んでるとしか表現できないがなんとなく表現力で無理矢理に伝わってくる。
「今日は休みだから軽く何か作ろうか。」
「ピギュ!」
そう言いながら冷蔵庫を覗き込むと、卵、牛乳、ハム、チーズ、マヨネーズ、納豆、油揚げ、選択肢がほとんどない。
ハムチーズトーストも考えた、ふつふつと踊るマヨネーズと、とろりととろけて伸びるチーズ、その双方にこんがりと焼き目が付き、ほどよい塩味のハムに粗い粒の胡椒が味の輪郭を引き締め、キツネ色に焼けた裏面が下顎にサクリという食感を返してくる……おっといけない流されかけた。
「甘じょっぱいのは平気かな?」
「ピギュ?」
「ははっ分からないか。」
話ながらボウルに卵、牛乳、砂糖、ほんの少しだけ塩を入れて混ぜる、次にバットを用意して混ぜ終わった卵液を注いでいく、卵液にひたひたになるように食パンを
パンを卵液に浸している間にハムとチーズをちぎろう、二人分に対してハムは3枚で、どこを食べてもハムが出てくるように、縁の部分は固くてちぎりにくいけど気合いで、さてチーズも3枚を包丁で細長く綺麗に切って…ちゃうねん、チーズはちぎろうとすると柔らかくて思わぬ方向に割けるんよ、あと
脳内小芝居も終わり、まるごと一枚のフレンチトーストを二枚軽く焼く、片面は生っぽくならないように、まな板の上にしっかりと焼いた面を上にしてフレンチトーストを置きハムとチーズを味気ないところがないようにパズルのように並べ粒の粗い胡椒をガリガリと削りかけていく、終わったら真ん中で切って具材の乗った面どうしを合わせて側面が卵で覆われるように何度も卵液に付けて焼く、最後に全ての面に火が通っているか確認して完成。
「昔何かのノベルゲームで描写が美味そうだったから、俺なりに再現したフレンチトーストのハムチーズサンドだ。」
「ピギュー!」
いつもパン一枚を30分くらいかけて食べてた祖父が存命の時に作ったら、5分で一枚分が溶けるように消えた問題作だ。
「では、いただきます。」
「ピッピギュギュ」
ふわっとした優しい食感と、ジュワッと溢れ出すほんのりとした甘味、そこにほのかに混ざるハムとチーズの塩味、甘さを抑え目にしているから甘味と塩味が喧嘩をしていない、自画自賛ながら手料理はやはり美味い、弁当屋の弁当はまぁ手作りに近い美味さがあるが、やはりコンビニ弁当やスーパーの弁当と多少の差はあれど少し無機質な感じがしてしまう、多分調理の工程が見えることやその際の音や匂い、手作りとはその全てがご馳走なのだろう。
俺がうんうんと頷いていると。
「ピーッギュッピーギュッ!」
と、フレンチトーストを取り込んだこの子も頭の上に星を3つ並べて大盛り上がりしていた。
「なんなのその採点機能…」
この子と彼の心の交流 はしらい @hashirai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。この子と彼の心の交流の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます