目隠し

 今まで気付かないふりをしてきた。

 そうしていれば嫌な思いもせず、傷つくこともなく、悩まずにいられたから。

 進んでその存在を認知はしない。

 透明人間と変わらない、そこには誰も居ない。

 でも罪悪感は抱くもの。同じ血が流れてる家族である分更に強く、時々視界に映る責めるような目が体の傷が目の奥に焼きつく。

 喉から漏れ出る言葉が追い立てるように背後から心をちくりと刺していく。息が詰まった。

「やめてよ」

 わたしを傷つけないでほしい。

「やめてよ」

 わたしを追い詰めないでほしい。

「やめてよ」

 わたしを縛らないでほしい。

 上手く息が吸えない、太陽が肌を焼く。

「緋音先輩、好きです」

 結局のところは誰もかもが、

「1年生の時からずっと見てたんです」

 私の本当の姿なんて見えてなくて、

「付き合いたいなんて高望みはしてないです」

 こんな醜い私を知ったらそんなこと言えないのに。そうに決まってるのに。

「でも、もし良ければ……!」

 いつもみたいに笑った。

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姉妹Aと彼の罪と罰 二沢双葉 @laypeya

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