姉A

理解

 死んで行くのが分かった。

 それでも体は、心は軽い。

 空をふわふわと飛んでくるくる回る。

 それと一緒に心も踊り出す。

 私は解放された。自由なんだ。

 私自身の理想像に縛られることもない。

 家族も、恋人も、友人も、あの人も、そのほか大勢の奴らも、誰もいない。

 足元を覗けばそこにいる。

 身体が地面にこびりついて、高いところから落とされたトマトみたいにひしゃげて中身を撒き散らした。半分潰れたピンポン玉は笑っている。

 鳥肌が立って吐き気がするほど気色の悪い自分。

 可笑しくて、愚かしくて堪らなくなって吹き出した。腹を抱えて笑う。

 涙が出るくらい、息もできないくらい。

 ふと冷静になりそれを眺める。

 くるくると毛先を弄び、目を細めて微笑んだ。

 生々しい生の匂いがするある夏の昼に私は死んだ。

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