continue

 心にいる美しい人を思い出していた。

 窓辺にかけてある十字架のクリスタルは相変わらず朝陽を纏ってキラキラと輝き、記憶に彩りを添える。


 今日も1日楽しくなりそうだね。


「おらぁぁ!キュウ!てめーさっさと降りてきて仕込み手伝え!」


 無駄にデカい声と無駄に長い足で、そう怒鳴りこんできたタマちゃん。


「キュウ!ズル休みしていいのは一年に一回だけだからな!」


 はいはい。



「ふんもお!」


 階段を降りていくと、うっしーがグラスを持って待っていた。グラスの中には牛乳milk入りのトマトジュースが入っていて……


「うっしー……これはナシ。」


 やれやれ。



「クゥ~ン」


 足元に小さく丸まるわびちゃん。


「まーた玉子の黄身見たの?」


 ……ふぅ。



『もう、みんなダメな奴ばっかだな』


 そう言おうと思ったけど止めた。


「……ほら、うっしーはフラちゃんを手伝って!」

「シルフ!わびちゃんと遊んでて!」

「ミィ、サトちゃん!掃除急いで」

「タマちゃん!ほら仕込みするよ」


 みんな、嫌そうな声を出したけど『本心』は決してそうではないと何故だかわかった。


「……キュウ、ほら、これ」


 むっちゃんが、目の前の作業台に分厚い紙の束を置く。

 パラパラと、少し目を通しただけでそれが何か検討がついた。


「むっちゃん、これ」


「まずは全国の"サクラ"ちゃんだ」


 どうやら北から南まで、"サクラ"という名の女の子を調べあげてくれたらしい。


「サンキュ」



 ねぇ、ハニー達。

 沢山のことを知ってしまって、つまらなくなったかい?



 ――なになに?

 ――前より好きになったって?



 へぇ、そういうこともあるんだね。

 それは、めでたしめでたしってことかな。



 ――ねぇ。僕は必ず会えると信じてる。いや、必ず見つけてみせるよ。


 ――でも。キミも僕を探してくれていると思うのは自惚れ過ぎだろうか。



 もし、自惚れじゃないならば……



 わたくし、人外レストラン『trick or treat』の案内役コンシェルジュ兼バーテンダーをしております、キュウで御座います。


 わたくしは、いつでも、いつまでも TOTここにおりますので、決してお忘れになりませぬよう、お願い申し上げます。



 ―END―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕はそれを信じてる~Twilight Alley ~ 嘉田 まりこ @MARIKO

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ